表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2326/2601

二千三百二十六 SANA編 「千晶姉えの子供」

十一月九日。水曜日。晴れ。




千晶ちあきさんの妊娠の件については、今日も結論が出なかったみたいだ。そう千早ちはやちゃんからメッセージがあった。でもそれは、千晶さん自身が迷ってるという以上に、金銭的な問題があるのかもしれない。相手の男性が逃げてしまって連絡も取れないから、堕胎費用については千晶さん自身が全額負担することになるはずなんだ。


なにしろ、母親も上のお姉さんも、


「自分で何とかしろ。私らを頼るな」


って言ってたそうだし。


確かに、そんな不実な男性と付き合って軽々しくセックスまでしてたのは、千晶さん自身だ。その責任は間違いなくあると思う。だけど、相手の男性と、何人もで千晶さんに乱暴したという人らの責任はもっと大きいはずだよね。ただ同時に、その男性らの責任について母親と上のお姉さんが肩代わりしなきゃいけない理由がないのも事実だとは思うかな。


でも、だからって堕胎費用を惜しんで出産に踏み切るとしたら今度は出産費用が掛かってくる。出産一時金は出ると言っても、あくまで一時金だ。しかも実際に掛かる費用に比べるとすごく心許ない額なのも確かだし、生まれてからなんだ、本番は。手間も費用も。


さらに、石生蔵いそくら家は、母親が看護師をしていて年収四百万円以上、お姉さんたち二人がそれぞれパートで年収二百万円ほどの、合わせて世帯年収としては八百万以上だから、出産についての扶助は出ない。


そういう意味じゃ、間違いなく堕胎する方が金銭的な負担は少なく済むと思う。


堕胎の際に事故でもない限りは。


そんな現実もちゃんと理解した上でないと、判断はできないよ。そしてそれを承知した上で、僕は、生んでくれるなら、子供は僕の手で育ててもいいと感じてる。だって、『千早ちゃんの姪か甥』だから。僕にとっての沙奈子と同じだから。それもあって、なんだか他人事じゃないんだ。


なんて身勝手なことも考えてしまってる。こんな僕が『善人』であるはずがない。


『父親が誰かも分からない、母親に育ててもらえない、でも生まれてきてもらいたい』


とか考えてる僕のどこが善人なの?。ただのエゴイストだよね。


その事実を理解していたい。だけどそれでも、もし、生まれてきてくれるのなら、受け止めてあげたいんだ。それは正直な気持ち。


「私も、千晶えの子供ってことなら、相手の男のことなんかどうでもいいから、生まれてきてほしいって思うんだ」


千早ちゃんも、沙奈子たちの前でそう口にしてた。しかもそれは口だけじゃないって、今の千早ちゃんの姿を見てるからこそ感じる。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ