表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2324/2601

二千三百二十四 SANA編 「丸投げしてしまう」

十一月七日。月曜日。晴れ。



『私は、実際に子供を生んで育ててる母親として千早ちゃんの言いたいことも分かる。そんな無責任なって思う。だけど、『育てる自信のない子供を生むのは無理』って気持ちも、分からないでもないんだ』


この中では唯一、自分自身で子供を妊娠して出産して育ててる絵里奈のその言葉は、とても重いものだと感じた。どれほど『母親の心理』を想像しても結局は『想像してるだけ』の僕に、本当の『母親としての実感』なんか分かるわけないのも事実だと思う。


いくら僕自身が『自分の実の子供じゃない』沙奈子を育ててきたと言っても、そんなのは、『幸運にも恵まれただけの出たとこ勝負』でしかなかったのもやっぱり事実なんだよ。僕にはその実感がある。それこそ骨の髄まで。思い返すだけで背筋が寒くなる。


その一方で、経験を積み、こうして力になってくれる周りの人がいる今の僕なら、あの時みたいな綱渡りをしなくても育てていける自信もある。玲緒奈れおなを育ててることで『復習』できてる。確認できてる。だから、


千晶ちあきさんの子供だって育ててみせる』


と思える。思えるけど、何より重大な点は、『千晶さんは僕じゃない』という点だ。


『育てる自信のない子供を生んでそれで赤の他人に丸投げしてしまう』


なんてことを躊躇なくできる人かどうか、僕には分からないんだよ。それが分からない時点で、僕は迂闊なことを言える立場じゃないんだ。


確かにここで強引なくらいに、


『僕が育ててみせる!。だから生んでほしい!』


的な啖呵を切って千晶さんの子供を引き取れればカッコもつくかもしれない。だけどそんなのは漫画やアニメやドラマの中の話だよね。現実にはそんな簡単な話じゃない。僕にだってそのくらいは分かる。


それに何より、絵里奈が玲緒奈を妊娠して出産してここまで育ててくれた様子を見て、出産は命懸けだっていうのは分かるし、だからこそ千晶さんに対して、


『命懸けで子供を生め』


なんてこっちからは言えないんだよ。かろうじて、肉親であり家族である千早ちはやちゃんだけだと思う。いくらかでも口出しできるのは。だけどその千早ちゃんが言っても『子供は生まない』という意思を変えられないなら、それはもうどうすることもできないと思うんだ。


千晶さんや相手の男性がどれほど不実でも、それに対してどんなに憤りを覚えても、所詮は赤の他人でしかない僕が踏み込めるところじゃないよ。


それと同時に、もし、千晶さんの気が変わって子供を生んだ上で任せてくれるなら、受け入れる覚悟はある。


できるのはそこまでだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 複数人でひとりの女性に乱暴した場合は、 いかなる状況でも罪に問われるハズです。 彼氏を含めて訴えることをオススメしますね
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ