表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2315/2601

二千三百十五 SANA編 「仲のいいお姉さん」

十月二十九日。土曜日。晴れ。




今日はまた土曜授業があるから沙奈子たちは朝から学校に行ってる。


篠原さんのことは、今までのところ大きな問題にはなってなかった。篠原さん自身が遠慮してるみたいだね。自分が思ってることはあるけど、それを強く主張できない状態と言うか。


だけどそういうのは、決して健全な状態とは言えない気がする。彼女が望んでそうしてるのならまだしも、


『言いたいけど言えない』


という形だったら、あまり好ましいとは思えないんだ。


『言いたいことも言えない世の中なんておかしい』


と声高に口にする人については違和感しかないけど、だからと言って鬱屈した気持ちをただ押し殺して周りに合わせてるだけというのも違うんじゃないかな。


もちろん何でもかんでも正直になればいいというわけじゃないのも事実だよ。みんなで楽しく歓談してる時に場を乱すような発言をする人というのはやっぱり好かれないだろうし。


だけど、それでも、なんだ。せめて誰かに正直な気持ちを打ち明けられればと思う。そしてそれができるのは千早ちはやちゃんなんだろうな。


沙奈子たちが帰ってきて一階の『人生部の部室』に集まってるのに、千早ちゃんと篠原さんの姿はなかった。


「千早は今日は遅れるって。篠原さんと一緒にいるから」


とのことだった。だから今日は水族館は見送る。そして一時間ほど遅れて千早ちゃんは帰ってきた。


すると彼女は、


「優佳は、しばらく来ないかも」


って。千早ちゃんの説明によると、


『相手を人間だと認めるからこそ何一つ正確じゃないことを言わないなんてことはないと理解する』


『成人するまでのたった数年すら待てないような人に誠意なんてない』


僕たちがそう考えてることについて篠原さんはどうしても飲み込めないみたいで、居心地が良くないって。


だけど千早ちゃん曰く、


「まあそれは建前かもね。ホントのところは、ヒロがピカえのものだってのがつらいんじゃないかな」


とのことだった。これについては大希ひろきくんは、


「いや、僕は別にピカえと付き合ってるとかじゃないけど……」


とは口にするものの、


「じゃあヒロはピカえのこと好きじゃないってのかよ?」


千早ちゃんに問い詰められて、


「別にそんなわけじゃないけどさ……」


困惑しきりだった。彼のそれは、優柔不断とかというのとは違うと思う。今の時点では彼自身、星谷さんへの気持ちは、


『仲のいいお姉さん』


って感じなんだろうな。『異性として意識してる』みたいなそれじゃないんだ。『LOVE』じゃなくて『LIKE』ってことだろうね。ただ同時に、だからって篠原さんに気持ちが向く可能性があるかと言われると、そんな予感は、傍目にもまったくないのも正直なところではある。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ