二千三百十二 SANA編 「彼にとっての」
十月二十六日。水曜日。晴れ。
『反抗期』は、それ自体が『親に原因がある』『親の所為にしてる』ってことのはずなのに、『反抗期はあって当たり前のこと』と言いつつ、『親の所為にするな』と口にする。
本当にダブルスタンダードが過ぎると思うんだけどな。
イチコさんや大希くんにはこれまで目立った反抗期がなかったと僕の目には見えてたけど、大希くん自身が『お父さんって子育て下手だよね』と口にしてしまったことは、きっと彼にとっての反抗期だったんだろうな。だけど、それ以上に強い反抗をする必要がなかったことでその程度で済んだんだと思う。
沙奈子もきっと、本当は僕に対して多少の不満くらいは持ってるんじゃないかな。だったらそれがいつか表に出てきても当然だと僕は思う。そのこと自体でショックを受けたりはしないでおこうと思う。何か言われたらそれについてはショックを覚えたとしてもね。
『言いたいことも言えない世の中とかおかしい』
ってことなら、子供が親に対して不満を口にするのも認められないとおかしいよね。だけど、『言いたいことも言えない世の中とかおかしい』とか言ってる人って基本的に『自分だけが一方的に言いたいことを言いたいだけ』という気がして仕方ない。本当に『言いたいことが言える』と考えてる人は、誰かが自分に対しても言いたいことが言えるというのも承知してるはずじゃないのかな。だったら自分が何かを言われる時にどんな風に言われたら嫌な気持ちになるか、ちゃんと考えてるんじゃないかな。そして嫌な気分にはなるべくなりたくないと考えてるのなら、誰かに対してもしっかりと言葉を選ぶと思うんだけどな。
あと、『言いたいことも言えない世の中とかおかしい』とか言ってる人って、結局は誰かを罵ってるばかりというのも多い気がする。だけどそれは『相手の所為』にしてるだけだよね?。ある芸人の芸風が気に入らないからって、『何を言われても自業自得』だとかいうのも、その芸人の所為にしてるだけだと思うけど?。
そうやって相手の所為にして自分だけが一方的に言いたいように言うのが『自由』だとか、誰からそんなことを教わったんだろうね。
僕は、沙奈子や玲緒奈が誰かをそんな風にして一方的に罵ったりしてたら悲しいよ。そういうことをせずにいられない状態で放っておきたくない。言いたいことがあるなら僕が聞く。それを他の人にぶつけるのはやめてほしい。なにか意見を発信する場合でも、ちゃんと言葉を選んでほしいと思う。そのための『手本』を僕は見せなきゃいけない。
それこそが『親の役目』だと思うからね。




