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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2304/2601

二千三百四 SANA編 「体育祭」

十月十八日。火曜日。曇り。




今日は沙奈子たちが通う高校の体育祭。父兄の見学も一応はできるらしいけど、


『生徒一名につき二名まで。ただし、在校生に兄弟姉妹がいる場合は合わせて二名までとする』


ということだった。しかも、『決められた場所から極力移動しないこと』『許可されていない場所には立ち入らないこと』という制約付き。


でも、高校生ともなるとさすがに見学に来る父兄も少ないらしいけどね。沙奈子も、


「うん。大丈夫。お父さんもお母さんも仕事しててくれたらいいから」


と言ってくれてた。本心では『見に来てくれたら嬉しい』と思ってそうな気はしつつも、


「ま、私んとこも母親が来るわけないし、小父さんに来てもらうのも悪いしさ」


「僕もさすがにもう気恥ずかしいかな」


「おデブに来させるわけにゃいかねーだろ」


「俺のところもまあ無理だな」


「私の両親も来るはずないです」


千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも一真かずまくんも篠原さんも家族が見に来るってことはないから、沙奈子もそれに合わせた形か。


だけど、だからって無理に我慢してるというわけじゃないのも表情を見てれば分かる。体育祭だからって特別なことをしなくても普段からいつも自分を見てもらえてる実感があるからなんだろうな。そのために僕もちゃんと彼女を見るようにしてきた。それが彼女にとっての精神的余裕に繋がってるんだと思う。いよいよ僕の下から巣立つための準備が整いつつある気がする。


そう思うと寂しいなっていうのもありつつ、かつての沙奈子のことを考えたらその成長ぶりに胸が熱くなるんだ。彼女をここまで支えることができた自分自身が誇らしい。


親っていうのは、それでいいとすごく思う。子供の成長を見届けられるというのが、親にとっての『褒美』だと思うんだ。子供に老後の面倒を見てもらうために育ててきたわけじゃない。子供の足を引っ張るのが親の役目じゃない。


そのためにも、僕自身、なるべく健康でいなきゃと思うけどね。加えて、老後のことについても準備を始めておかなきゃ。高齢者施設を利用することになるはずだけど、職員の人たちをちゃんと敬うことができる人間でいなきゃとも思うんだ。認知症になったりしたらどこまでそうできるかは分からないにしても、少なくとも自分のことが分かる間は、他者を敬える人間でいたい。施設の職員に対して横柄で横暴な態度を取る僕の姿を見せたいとは思わない。


僕は決して完璧な人間じゃないけど、完璧じゃないなりにせめて悪辣ではいたくないんだ。沙奈子や玲緒奈れおなに恥ずかしくないようにね。



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