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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2301/2601

二千三百一 SANA編 「飛び抜けた才覚」

十月十五日。土曜日。晴れ。




正直、ここまで様子を見てきて、篠原さんの感覚は僕たちとは違いそうだというのを感じた。彼女はどうしても、相手に対して『強く期待』してしまう傾向がある気がする。相手が自分にとって都合よく振る舞ってくれることを期待してる印象があるんだ。


千早ちはやちゃんに対しても、


『自分を助けてほしい』


『救ってほしい』


と考えてるんだろうなっていう様子が、言動の端々から見られる。人生部に馴染んできたからこそ、素直に自分の思ってることを口にできるようになってきてる感じかな。


「千早は私の味方だよね?」


「千早は私のことを信じてくれるよね?」


そんなことをたびたび口にするようになってきてるんだ。だからこその、


『信じてもらえてないって思うと、なんか、嫌』


という発言なんだろうな。


僕は決してそれを責めたいわけじゃないんだ。今まで抑圧的な両親の支配下にあったことでそこから抜け出したい、救われたいって気持ちがあるんだと思うし、そのこと自体は無理もないと思う。


なにしろ千早ちゃんも、星谷ひかりたにさんに出逢ってそれを頼るようになってから、強く依存するようになった時期があったらしいから。星谷さんが、自分に暴力をふるってくる母親やお姉さんたちを懲らしめてくれると期待して、でも星谷さんにはそれをするつもりがなかったことを知って、


『裏切られた!』


『騙された!』


って感じてしまったこともあったらしい。篠原さんはちょうど、その頃の千早ちゃんに近い状態なんじゃないかな。


千早ちゃんはそれを乗り越えて星谷さんを信頼できるようになったけど、篠原さんはどうだろう。


当時、星谷さんは今の千早ちゃんと同じ高校一年生。しかも同じ学校に通ってた。それを思うと星谷さんがいかに飛び抜けた才覚の持ち主だったのかが改めて実感できる。そうだ。千早ちゃんと星谷さんが親しくなれたのも、沙奈子との一件があった夏休み明けの後だったはずだから、ちょうど六年前の今くらいの時期だったんじゃないかな。その時の星谷さんと千早ちゃんを比べると……。


『比べる』というのも失礼なことだね。でも、千早ちゃんもケーキ屋の開業を目指してすごく頑張ってるし、僕が高校一年生だった頃に比べたら段違いに具体的な目標に向かって具体的な努力ができてるとは感じつつ、やっぱり星谷さんと比べるのは無茶だなって印象もある。


だから、千早ちゃんにとっての星谷さんみたいにはなれないかもしれないけれど、それも人間である以上は当然のことのはずなんだ。誰もが同じことをできるわけじゃないからね。



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