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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百九十八 SANA編 「安易に信用は」

十月十二日。水曜日。曇り。




篠原さんがどうやら大希ひろきくんを意識してるらしいってことがきっかけで始まった『優しい』に関する議論はその後も続いて、


「僕もただの優柔不断とか、相手の言いなりになるだけなのは優しさじゃないと思ってる。これはお父さんが言ってたことだけど」


大希くんが口にすると、篠原さんは、


「わ、私は……、山仁やまひとくんに甘やかしてほしいとか思ってないから……!」


だって。話の流れ的に『甘やかしてほしいと考えるのはよくない』って感じになってると解釈したみたいだね。だけどみんなは、


『〇〇だからよくない』


と決めつけてるわけじゃないのは、これまで見てきた僕だからこそ感じる。あくまで、


『自分はそうじゃないと思う』


と言ってるだけなんだ。他の人が『優しい』ってことについてどう解釈してても別にそれは構わないんだよ。その解釈が当人に何をもたらしても、自らの責任において受け止めるのならね。


だってその人は自分じゃないんだから。自分の考えを一方的に押し付けるのは、トラブルの素だから。そんなことをしてわざわざ自分からトラブルの種を蒔く必要もない。


なんか最近は、わざわざ自分からトラブルの種を蒔くことで注目を集めようとする人もいるらしいけど、僕たちはそれを好ましいとは思わないし、千早ちはやちゃんたちもそれを好ましいとは思ってないのが分かる。せっかくの平穏を自分から壊しに行く必要はないよね。そこまでして注目を浴びる必要もないし。今の時点でちゃんと自分のことを見てくれてる実感のある人が身近にいるから。ネットの向こうじゃなく。


ネットの向こうにそういう人を求めるのも本人の自由だとしても、しっかりとその表情やしぐさが見えない相手をどこまで信用できるかって考えたら、僕にはその選択はできないな。それよりはやっぱり、身近にそういう人がいれば十分だと感じてる。


千早ちゃんはコミュニケーション能力は高いけど、だからって誰のことも安易に信用はしないんだ。何しろ相手は『人間』だから。人間は嘘を吐く。本当のことを言わない時がある。悪意からの嘘じゃなくても、自分をより良く見せたいとか、相手からよく思われたいとか、時には相手を気遣ってるからこそ事実を告げないこともある。


相手を人間だと思えばこそ、『相手が口にしてること、相手が出してきてる情報のすべてが真実とは限らない』というのを認める必要があるはずなんだ。相手が何一つ嘘を吐かない、本当じゃないことを口にしないと考えるのは、むしろその人のことを人間だと思ってないって意味になるんじゃないかな。



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