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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百九十三 SANA編 「カウンセラー」

十月七日。金曜日。雨。




沙奈子たちが通う高校では、毎週金曜日にカウンセラーが来る。すると毎回、何人かの生徒が相談しに行くそうだ。


だけど沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんや一真かずまくんは利用したことがない。その必要がなかったからだった。


「カウンセラーの人は専門家かもだけど、言っても『知らない人』だしねえ。だったらピカえや小父さんやイチえに相談するよ」


千早ちゃんが言うと、


「そうだよなあ。僕も結局、中学ん時はお父さんに聞いてもらったしなあ。先生とかにも『相談してほしい』って言われたけど、なんかねえ」


大希くんもそんな感じで。


「俺としちゃ、大人に相談するってのがピンとこねえ」


と結人くん。


「俺も、親には相談とかできないからするとしたらカウンセラーにって思うけど、親のことどうこうできるわけじゃないしなあ」


苦笑いで言ったのは一真くん。


確かに一真くんの場合は、一にも二にも両親の存在が問題なんであって、それがどうにかならない限り状況は改善されないっていうのは事実なんだろうな。現状では、余計に悪化するのを防ぐことを前提にするしかない状態だった。


これが会社とかの『パワハラ上司』だったりしたら、辞める覚悟の上で逆に食って掛かっていっそ問題を公にするっていうやり方もあるかもしれないけど、何しろ家族だからね。しかも警察や児童相談所も表立って動けないくらいに巧妙に立ち回ってるくらいだから、たとえ保護を求めたって対応してもらえないのが分かる。これについては、星谷ひかりたにさんでさえ、


「今の時点では難しいでしょう。特に琴美ことみさんがまだ幼いうちは、保護者と引き離すにも十分な事情が必要になります」


とのことだった。ただ、星谷さんは、


「緊急の事態の場合には多少強引な手段も取る準備はありますので、相談していただければ対処します」


とも言ってくれてる。だからこそ彼女でさえ今の時点では『何とか状況を悪くしない方向で』としか言いようがないらしい。一真くんや琴美ちゃんに対して支払われてる就学支援を自分たちの酒代や遊興費に使ってしまっていることについても、それだけで罪を問うことは難しいし。なにしろお金には色がついてないからね。親という立場であれば何とでも言い逃れできてしまう。


道義的には確かに問題でも、それ以上の対応は難しいんだって。歯痒いよね。


だからこそ今は僕たちが一真くんや琴美ちゃんの精神的な支えにならなくちゃと思う。そして大人が全員、二人の両親みたいなのってわけじゃないと示さなきゃいけないと感じるんだ。



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