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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百八十六 SANA編 「生まれた時から」

九月三十日。金曜日。晴れ。




この世にはどうしてこんなに他の誰かを傷付けることをまるで当然の権利のように思ってる人が多いんだろう?。


僕は親として沙奈子や玲緒奈れおなを育てて、実感してしまったよ。


『ああ、結局は親や身近な大人がそれをしてるからなんだろうな』


って。


自分の身の回りを見てるだけでも『実例』が無数にあるんじゃないかな?。『子供を馬鹿にしてる親』とか『子供を馬鹿にしてる大人』とか。小さな子供、それこそ赤ん坊くらいの子が何か上手くできなかったとか失敗したとかだけで、その子の存在そのものを否定するくらいに馬鹿にしたり見下したり嘲ったりしてる親とか大人とか、どれだけいるのかな?。


僕の両親に至っては、兄が見ている前で僕のことをそれこそ『家に勝手に上がり込んだ野良猫』みたいに扱ってたのを覚えてる。それが当然の権利みたいにね。兄が両親から馬鹿にされてたようなところは僕は見た覚えはなかったけど、とにかく僕のことは蔑まずにはいられなかったみたいだ。もしかすると兄が我儘とかを言って自分たちを振り回してくるストレスを、僕を虐げることで晴らしていたのかもしれない。


そういう両親を見てた兄は、『両親のコピー』どころか、まさしく両親のよくない部分を合わせて煮詰めて濃縮したみたいな人間に育った。


絵里奈も言ってたよ。


「私の両親も、とにかく私のことを『失敗作だ』みたいに言ってました。父が離婚して再婚した相手の女性は、露骨に面と向かって口にはしませんでしたけど、私に対しては『なんでこんなのの母親をしなきゃならないの?』的に思ってたのは知ってます。電話でそんな話をしてたのが聞こえましたから」


って。だから僕も絵里奈も、内心では他の誰かを馬鹿にしてる部分もあった。


だけどね、それじゃ駄目なんだって今なら分かるよ。分かるから、沙奈子や玲緒奈の前じゃ誰かを馬鹿にするようなことは口にしないようにしなきゃと思うし、何より、沙奈子や玲緒奈のことを馬鹿にしたり見下したりしないようにしなきゃと思うんだ。ましてや、『人間じゃない』とか思ったりそれを態度に出したり口にしたりなんて、とんでもない。そんなことをしてるから、その子供も、自分にとって都合の悪い相手のことは人間扱いしなくなるんじゃないの?。


沙奈子は人間だし、僕と絵里奈の実の子供の玲緒奈だって生まれた時から人間だよ。人間以外の何かじゃ絶対にない。だったら人間として接するのが当たり前だと思うし、親である僕や絵里奈や、周囲の大人や大人に近い存在である玲那や沙奈子の、玲緒奈に対する接し方から、彼女も他の誰かへの接し方を学ぶはずなんだ。



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