二千二百七十五 SANA編 「証拠が何一つ」
九月十九日。月曜日。雨。
今日は敬老の日。
沙奈子たちは土曜授業があったから三連休とはいかなかったけど、学校そのものは楽しいらしいから平気みたいだ。もっとも、その『学校が楽しい』というのも、あくまで千早ちゃんたちがいるかららしいけどね。
だからこそ、そう思える友達がいるのがありがたい。そうじゃなきゃ、あれこれ言ってくる人がいるストレスは大変だったと思うし。
そう言えば、『あれこれ言ってくる人』について、沙奈子のドールのドレスの件では、
「沙奈子ちゃんのドレスの縫製がちゃちとか『子供が作ってんのかと思った』みたいに言ってるのってさ、実際に買った人じゃないんじゃないか?って推測があるんだよね。だって、毎回、競争率がすっごい高い、値段もなかなか上等な『沙奈子ちゃん自身の手によるオリジナル』をわざわざ買ってまでチェックするのがホントにいるか?って考えたら、さすがに厳しいと思うんだよ。大して好きでもない、もしかしたらそれこそ嫌ってるものに対してそこまでする?。
量産品の方は値段も手頃だし注文すれば確実に手に入るけどさ、でも量産品はミシンによる縫製なんだよね。それについて言ってるのかと思ったら前後の文脈からオリジナルの方のことを言ってるっぽいしで、これは、『縫製は少し甘さも感じますけど、これも手作りゆえの味だと思います』みたいに言ってる人のコメントを悪意で解釈してるだけなんじゃないかなって言われてるんだ」
玲那がそう話してた。それが事実かどうかまでは分からないにしても、もし事実なら、本当に卑怯だと思う。自分の気に入らないものを貶めるためなら平気で嘘も吐くそのやり方を誰から教わったんだろうね。
そんなことが当たり前のようにある世の中だから生きづらいと感じるんじゃないの?。どうしてそれを改めていこうとしないのかな。
逆に、沙奈子のオリジナルのドレスを買った人なら、記録が残ってるから誰か分かってしまう。分からなくてもドレスの写真を出せばそれがオリジナルか量産品か分かってしまう。だからか、写真は出してないそうだ。ということは、その人の言ってることが本当かどうかさえ確かめる方法はない。ドレスの写真を出さないことで、『実際には買ってないんじゃないの?』という疑いが掛けられている。加えてその発信をしてるアカウント自体、つい最近作られたものだって。
それが物証にならないことも事実だけど、『実際に買った上での感想だということを示す証拠が何一つない』こともまた事実なんだ。
不審さしかないということだね。だからって攻撃するのも違うと思うけど。




