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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二百二十七 玲那編 「カップル誕生?」

今回も、当たり前のように星谷さんが、ハンバーグの材料を持ってきてくれてたから、うちはキッチンと道具を提供するだけで済んだ。その上、おやつとして今日はアップルパイまで差し入れてくれてた。本当にすごい子だなあ。


僕は千早ちはやちゃんが作ったハンバーグを、絵里奈は沙奈子が作ったハンバーグを、星谷ひかりたにさんは大希ひろきくんが作ったハンバーグをそれぞれ食べた。絵里奈がしっかり監督して作ったものだから、もちろん美味しかった。


「ヒロ坊くん、美味しいですぅ~」


星谷さんなんてそんな感じでメロメロだった。


玲那には三人が作ったハンバーグが一つずつ残ってるから、好きなのを選んでもらえばいいと思う。残ったら夕食のおかずにすればいいし。


デザートのアップルパイもいただいて、僕たちはとても満足していた。


「バイバ~イ、明日はホットケーキ作ろうね~」


千早ちゃんがニコニコしながらそう言って、三人は帰っていった。その声が聞こえてたんだろう。すぐ後で玲那が「ただいま~」って帰ってきた。それから沙奈子の作ったハンバーグを食べながら、ニヤニヤと笑みを浮かべて、


「お父さん、お母さん、今日はさすがにデートに行った方がいいんじゃない?」


って言ってきた。沙奈子もうんうんて頷いてくれてたから、じゃあ、お言葉に甘えてということで絵里奈とデート?に行くことになった。さすがにもう最初の頃のようにドギマギはしないけど、やっぱり照れ臭いのは変わらなくて、僕も絵里奈も顔を真っ赤にしながらも、二人で手を繋いで歩いてたのだった。




夕方、また買い物をしてから帰るために、沙奈子と玲那にスーパーまで来てもらった。玲那は僕たちを見てニタァ~って笑ったけど、沙奈子は普通にニコニコしてくれてただけだった。


四人であれこれ買い物をした上で、夕食は千早ちゃんと大希くんのハンバーグが残ってるから、それに付け足してお惣菜の唐揚げとサラダを買って帰った。


家に帰って夕食を食べる。ハンバーグは沙奈子と絵里奈が食べることになった。絵里奈は揚げ物があまり好きじゃないからハンバーグの方がいいってことだった。ただ、どっちが千早ちゃんのか大希くんのか分からなくなったからその辺は気にしない。僕と玲那は唐揚げで食べた。


夕食の後で、沙奈子は絵里奈とお風呂に入って、玲那はまた僕の膝に座ってた。そして僕の体に鼻を近付けてクンクンと嗅ぐ仕草を見せて、


「あ~、絵里奈の匂いだ~」


とか言ってきた。しかも、


「いやいや、仲がよろしくて羨ましい限りですな~」


ウシシシシって感じで手で口を押えつつ僕を横目で見ながらそう言った玲那に、僕は苦笑いしか返せなかった。でもそれに続けて、


「仲がいいと言えば、実は驚いたことに、私のオタ仲間の子の一人と、このアパートの住人の人が、二人だけで直接連絡取り合ってるみたいなんだよね~」


って。僕はそれを聞いて、さすがに『え?』ってなった。いやもちろんそういうこともあるかなと思ってのことだったんだろうけどさ。玲那にとってもそうだったらしくて、


「いや~、さすがにこれには私も驚きました~。まさかホントにカッポーができちゃうとは」


だって。ただその後すぐ、玲那は困ったような顔をして腕を組んだ。


「でもね~、ちょっと素直に喜べないんだな~、これが」


え?、それってどういう意味…?。


「実はね~、そのアパートの住人の人っていうのが、例のカメラ仕掛けた佐久瀬さくらいさんなんだよね~。すごく気が合ったらしくて~。カメラ仕掛けてたってこともちゃんと教えたんだけど、佐久瀬さんがそのことすごく反省してるって感じだから気にしないってことらしくてさ~。ちょびっとばかり心配なんだよね~」


なるほど、それは確かに心配だと僕も思う。カメラ仕掛けたことを本当に反省してくれてるんならいいとしても、まずそういう風に考える人だってことでやっぱり不安になるよね。


ただ、カメラを仕掛けたことを正直に話したのなら、その点ではまだ評価もできるのかな。だけどやっぱり慎重にはなった方がいいかも知れない。万が一のこととかあったら嫌だし。


名前も知らない人でも、玲那の友達だったら僕にとっても全く無関係な人ってわけじゃない。ちゃんと幸せになって欲しい。玲那のためにも。


玲那の友達が辛い思いしてたら玲那が悲しむ。この子が悲しむところなんて僕は見たくない。だから友達にも幸せになってもらわなくちゃ困る。


「というわけで、慎重に監視を続けるであります!」


と、何の真似かは知らないけどたぶん何かのアニメの真似だと思う敬礼を僕に向けて、玲那はニカッと笑った。そしてさらに、


「んでもって、明日また、みんなでオフ会であります!」


って、また?。まあいいけどさ。


その後、お風呂から上がった沙奈子と絵里奈に続いて玲那がお風呂に入って、最後に僕が入ってっていつもの流れになった。


お風呂の後は四人でのんびり寛いで、10時過ぎには寝たのだった。




日曜日の朝も、いつもの感じだった。沙奈子ももう、あんなことがあったのなんかすっかり忘れたみたいに明るかった。左腕の傷はまだまだ目立つけど、当の沙奈子自身が特に気にしてない感じだったから、僕たちもあえてそれに触れようとは思わなかった。


朝食を食べて掃除して洗濯して、沙奈子の午前の勉強をしてってしてたら、玲那が、


「あ、そろそろ時間だ。じゃ、行ってきま~す」


と出て行った。するとまたすぐ外で、「じゃあ、行きましょ~か~」って声が聞こえて、何人もの人がぞろぞろと遠ざかっていく気配がしてた。女の子たちとはカラオケ屋で待ち合わせしてるらしかった。


もし、沙奈子がそういう賑やかなのが好きな子だったら一度、カラオケ屋にも連れて行ってあげたいとは思ってるんだけど、どうもそういうのには興味が無さそうだからなあ。以前、『カラオケやってみたい?』って聞いたら首をかしげて『分からない』って言ってたし。だけど、


「れいなおねえちゃん、楽しそうだね」


と、玲那が楽しそうにしてるのは喜んでくれてるみたいだった。それでも、自分も行きたいとか、ついて行きたそうにするとかはまったく無かった。そういうところはけっこう割り切ってると言うか、クールと言うか、自分が興味ないものにはすごく冷静な反応する子なんだよな。


この子のそういうところがまた、他の人には理解しにくいところかもしれない。空気を読まないと言うか、みんなで盛り上がってる時に一人こういう態度だと誤解を生む原因にもなりそうだ。無理にみんなに合わせろとは言わないにしても、その辺りを上手に躱せるように教えてあげられたらなって思う。もっとも、僕もそういうのは全く苦手だからなあ。教えてあげられそうにない。


この辺をどうやって学ぶかっていうのが今後の課題かなって僕は思ったのだった。


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