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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百六十九 SANA編 「子供を侮りすぎ」

九月十三日。火曜日。晴れ。




玲緒奈れおなは本当に、『イヤイヤ期』みたいなのはなかった。それは結局、僕たちが大きな声を上げて彼女を自分の思い通りに操ろうとしなかったことで、その真似をしなかったんだろうなって感じる。


もちろん、玲緒奈自身が大きな声を上げることはあるんだけど、僕も絵里奈も玲那もあくまで穏当に彼女の言葉に耳を傾けるようにしてたから、自分が大きな声を出すことについて『それが正解』だとは思わなかったんだろうな。僕や絵里奈や玲那がそこで大きな声を上げてたら、玲緒奈も『自分が大きな声を上げるのは当たり前』って考えるようになってたかもしれないと感じるんだ。


『子供がそこまで考えてるわけないだろ』


みたいに言う人もいると思うけど、それは子供を侮りすぎってものじゃないかな。玲緒奈をよく見てると、この子はすごくいろんなことを見て聞いて感じて考えてるっていうのが分かるんだ。決して侮っていい相手じゃない。僕たちの一挙手一投足をつぶさに観察してるし、僕たちの感情みたいなものも見抜かれてるのが分かる。


僕が仕事を終えて伸びとかしてると、


「パパ、よしよし」


って言いながら体を撫でたりしてくれるんだよ。別に絵里奈や玲那がそんな風にしてたわけじゃないのに、あくまで、


「お疲れ様」


と言葉で労ってくれてただけなのに、玲緒奈は『よしよしと声を掛けながら体を撫でる』という労い方を自分であみだしたんだ。もしかしたら一回か二回は玲緒奈の前で絵里奈がそんな風にしてくれたこともあったかもしれないけど、それでも僕自身さえ覚えていないようなたったそれだけのことを見て真似するというのは、普通にすごいことだと思うけどな。まだ二歳にもなってない、赤ん坊同然の子供が。


だから、親や大人は子供を侮りすぎてるんだよ。『自分の何気ない振る舞いを見られてる』という自覚が足りないんだってすごく感じずにはいられない。親が大きな声を上げて子供を従わせようとすれば、子供も『大きな声を上げて相手を従わせようとするやり方』を学んでしまうとつくづく思った。


そういうことを考慮に入れずに『その方が楽だから』『手っ取り早いから』という、『自分を甘やかすやり方』をしてれば、子供の方もそういう『自分を甘やかすやり方』を学んでしまうんだろうな。


それについても、


『そんなわけない!』


みたいに強く否定しようとする人もいるとしても、実際に『子供みたいな振る舞いをする大人』があんまりにもたくさんいる現実を考えたら、『自分を甘やかすやり方』が身に付いてしまってるんだろうなとしか思えないんだけどな。



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