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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百六十八 SANA編 「ちゃんとした大人」

九月十二日。月曜日。晴れ。




この前の土曜日は、琴美ことみちゃんの誕生日をささやかながら祝って、それから水族館にハイヤーで行ってきた。さすがにエプロンドレスは着替えてだけどね。水族館に行くのも『人生部の活動の一環』ではあるんだけど、『エプロンドレスで水族館へ』はハードルが高いか。


今日ももちろん沙奈子たちは学校。絵里奈と玲那は『SANA』に出勤。だから家には僕と玲緒奈れおなだけだ。


あと半月で二歳になる玲緒奈だけど、『イヤイヤ期』みたいなものはほとんどなかったと思う。もちろん気に入らないことがあると、


「ダメ!」


とか言って拒絶するんだけど、


「そっかあ~、ダメか~」


と僕たちが軽く受け流していると、それ以上は感情を昂らせたりしなかったんだ。これはイチコさんや大希ひろきくんもそうだったと山仁やまひとさんが言ってた。


「私は一弧いちこや大希を大きな声で従わせようとはしなかったんです。たださすがに咄嗟に大きな声を出してしまうことはありましたから、そんな時にはすぐに『ごめんね』と謝りました。『大きな声を上げて相手を従わせようとするのはよくないことだ』と学んでほしかったからです。誰かに希望を伝える時にはあくまで丁寧に理性的に。必要なことを的確に伝えるべきだというのを基本にしてほしかったからです。大きな声を上げて威圧的に振る舞わなければいけない状況など、実際にはそんなに多くないはずですから」


そう語る山仁さんに僕も共感しかなかった。今の職場では、仕事上の指示でも、上司は淡々と要件を分かりやすくまとめて伝えてくれるから、僕も淡々と応えるだけで済んでる。それで仕事はちゃんとこなせてる。他の職員もちゃんとそれで仕事をこなしてくれる。大声を上げて怒鳴って従わせないとダメな人は、僕の知る限りではいないんだ。個性的な振る舞いをする洲律すりつさんさえ仕事については余計な手間を掛けないようにしてるし。


あの職場で働いてる人のほとんどは『普通にちゃんとした大人』なんだ。そういう人を雇ってる。決して給料は高いとは言えないけど、少なくとも社内に理不尽な人がいないから働きやすくて、それが分かる人だけが集まってる感じかな。その一方でクライアントには高圧的な人とかもいたりするから嫌な思いをすることがまったくないと言ったらそれは嘘になるけどさ。


だけど、人生ってそもそもそういうものだというのは事実だと思う。その一方で、社内の空気は悪くないから、外でそういうのがあっても耐えられるというのもある気がするんだ。


募集を掛けてもなかなか応募はないけど、離職率は低いんだよね。



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