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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百六十四 SANA編 「お金の問題は」

九月八日。木曜日。晴れ。




火曜水曜と二日間に亘って、沙奈子たちが通う学校で行われていた文化祭は、無事に終えられたそうだ。派手に盛り上がったわけじゃないにせよ、大きな混乱もなく、沙奈子としては、


「楽しかったと思う」


って言ってくれてた。そして千早ちはやちゃんが言ったとおり、人生部としての活動中はエプロンドレスを着てる。沙奈子自身も気に入ったみたいだ。


そして今日は波多野さんの誕生日。だから千早ちはやちゃんは昨日から仕込んでケーキを焼いて、結人ゆうとくんが『人生部の活動』が終わってから届けてくれた。


最近は、波多野さんの部屋で過ごすことも多いからね。鷲崎わしざきさんと喜緑きみどりさんが一緒に過ごせるように気を遣って。


鷲崎さんと喜緑さんについても、喜緑さんの方が自分の収入が少ないことを気にして結婚に踏み切れずにいるらしいけど、それで時々、言い合いになったりしてるらしいけど、それでも二人の気持ちとしては『いつかは』という想いがあるみたいだ。


ただ同時に、


「喜緑…さんの親が、さすがにいろいろ言ってるらしい」


結人くんからそんな話も。これに対して玲那は、


「そりゃまあ、とっくんの両親としても、十歳も年上で、しかも血の繋がらない子供を育ててるなんて相手とじゃ、『大丈夫か?』とは思うよねえ」


苦い表情でそんなことを。


確かに、僕たちは鷲崎さんや結人くんのことをよく知ってるから、そういう意味では心配は要らないと思えるけど、二人のことをよく知らなければ、そう思ってしまっても無理はないと僕も感じる。


だけどこのことについては、


「でも、とっくん自身は、家のことはお兄さんがちゃんとしてくれるから自分は好きにしていいはずだって思ってるみたいでね。最悪、両親と縁を切ってでもとは思ってるみたい」


だって。だから覚悟はしてるらしい。らしいんだけど、他方では、


「けどさあ、収入の点で踏み切れないみたいなんだよねえ」


とも。


そうだね。お金の問題は、生きてる以上はどうしたってついて回る。


『愛さえあればお金なんて』


とは、僕も言わない。正直なところ、僕たちだって僕の収入だけでは生活は成り立たない。それを絵里奈と玲那に働いてもらって、今じゃさらに沙奈子にまでバイトしてもらって、その前提があって成立してるのは事実だ。世帯年収一千万円以上ではあっても、五人家族のうちの四人が働いてようやくそれなだけだし。


しかも僕たちは全員がそれで納得して力を合わせられてるからやれてるだけで、他の人にも僕たちと同じやり方をすればいいとは、言えない。


『鷲崎さんがそれでいいって言ってるなら、いいと思うんだけどな』


とは思いつつも、ね。


なにしろ、鷲崎さんがもし妊娠したら、今の会社はその辺もちゃんとしてくれてるけど、育児休業も取れるけど、やっぱり給料は満額入ってくるわけじゃないから、いろいろ厳しくなるのも事実だと思う。


そして結人くんが『大学には行かない。就職する』と言ってるのも、そういう部分があるみたいだ。



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