二千二百六十 SANA編 「ロボットがすれば」
九月四日。日曜日。晴れ。
星谷さんは、今、
『人間をサポートするためのロボット』
の開発のための研究に力を入れてるらしい。星谷さん自身がその技術を開発するんじゃなくて、そういうことを実現するための技術者の育成や体制作りという形で。
以前に見せてくれた義手や義足についても、それに繋がる研究の一環で、実際にそういう形で実用化していくことでさらに技術を磨いていくためにしてることだそうだ。
元々は玲那の声を取り戻すための研究として始まったことが、いろんな人と知り合っていく中でどんどん広がっていってるってことなんだろうな。
それなのに、『SANA』としての仕事も疎かにしないでいてくれてる。
と言うか、ドールそのものも、いずれ人間と変わらない振る舞いができるロボットの開発の一環として見ている感じなのかな。
「ロボットを人間そっくりに作ることについては、『非効率では?』と考える方もいらっしゃいます。確かに無理があるというのも事実でしょう。ですが、本当に人間に寄り添って人間の心理にまで影響を与える形で支えるとなれば、『人間を思わせる姿』というものは意味があると私は考えるのです。特に、介護や育児のサポートという点においては。
私が存命中には実現できないとしても、未来を見据えるならば研究を続けることに意味はあると感じます」
そうだね。いまだに玲那の声を完全には取り戻せていない現実を考えるなら、『人間と同じ姿を持って人間と同じことができるロボット』なんてただの夢物語にしか思えないのも事実だ。だけどそれはあくまで『今の技術では』という前提での話。さらに技術が進歩していけば、あるいは。っていうのも事実なんじゃないかな。
そして、
『ロボットが人間の仕事を奪う』
という懸念についても、実際には現状で人間が過重労働という形で仕事をこなしてる現実を考えれば、ロボットにはその過重労働の部分を負担してもらえば済む話という気もするんだよ。もちろんそれを実現するには制度設計も欠かせないと思うけどさ。例えば、
『人間の従業員のサポートという名目があればロボットを導入してもいい』
的な、ね。
玲那も言ってた。
「よく、『リモートワークを導入したら仕事をさぼるのがいる』みたいなことを言ってる人がいるけど、それっておかしいと思うんだよね。リモートワークしてて、見えないところでさぼっててもその人がしなきゃいけない分の仕事がこなせてるんなら、その人が会社に出勤してた時には何をやってたの?って話じゃん?。その人が本来やる仕事じゃない雑用を押し付けてたってことになんない?」
ってさ。
『その雑用をロボットがすればいい』ってことにできないかな?。




