二千二百五十八 SANA編 「朗らかな在り方」
九月二日。金曜日。晴れ。
秋嶋さんの『新型コロナウイルス感染症罹患』もあっていろいろ考えてしまったけど、その一方で、僕たち自身はこれまで通りの生活を送ってるだけだった。沙奈子たちも学校が始まって、午前は授業、午後からは文化祭の準備という毎日だ。
そして来週の火曜日と水曜日に二日間、文化祭が行われるって。本来は三日間に亘って行われるはずだったのが縮小されたけど、保護者とか外部の人も招いて行うというのは無理だったけど、それでも文化祭そのものは開催するという方向で決断できたのは、たくさんの人の努力があってのことなんだろうな。
だからこそ、クラスター発生みたいなことが起こらないように努力しなきゃいけないと思う。
「これはこれで思い出深い文化祭になるかもしれませんよね」
沙奈子にコスプレ用のドレスの作り方を指導しながら絵里奈も言ってた。それもあって、
「できた!」
沙奈子自身と千早ちゃん用のエプロンドレスが完成。そしてさらにすぐ、篠原さんもお揃いでエプロンドレスを着ることになった分の制作に取り掛かる。
と言うのも、篠原さんは自分のお小遣いで、市販されてるアニメのコスチュームを、しかも一万円以上するかなり本格的なのを買って着るつもりだったそうなんだけど、
「いや、それはさすがにやりすぎじゃね?。他のコらはそれこそ百均とかで売ってるハロウィン用の小道具を使った手作り衣装とか、段ボールを材料にしたハリボテで作ってるらしいのに、金にあかせて超本格的なのってのはさすがに悪目立ちしないかなあ。沙奈の手作り衣装でもかなり目立ちそうだって思うんだよね」
千早ちゃんが口にしたことで、
「そ……、そうかな……」
篠原さんは腰が引けてしまったみたいだ。そこに沙奈子が、
「材料はまだあるから、よかったら作るよ」
って言ってくれて、結果、お揃いのエプロンドレスを着ることに。
「ごめんなさい、沙奈子さん」
恐縮する篠原さんに、
「なに言ってんの。仲間だろ?。こういう時は『ありがとう』でいいんだよ」
千早ちゃんは、玲那が秋嶋さんに言ったのと同じことを口にして、沙奈子も、
「千早の言うとおりだよ」
って。
そうだ。千早ちゃんや波多野さんは、振る舞いがなんだか玲那に似てきてる。玲那のあっけらかんとした明るさを、千早ちゃんや波多野さんが参考にしてる気がする。『大人として影響を与えてる』ってことなんじゃないかな。
それが誇らしい。
誰かを嘲って見下して蔑んで蔑ろにするような振る舞いを真似するんじゃなくて、こうして朗らかな在り方を真似してくれてるのが、本当に嬉しいよ。




