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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百五十三 SANA編 「漫画やアニメの」

八月二十八日。日曜日。曇り。




秋嶋あきしまさんが発症して七日目。外出制限はあと三日。ただ、


『頭痛と喉の痛みと熱はだいたい収まりました。でも、やっぱり体のあちこちが痛いのと疲れやすいのと頭がぼうっとなってるのは、まだ治らないです』


とのことだった。秋嶋さんはまだ二十代半ば。それでこの状態というのは、やっぱり『普通の風邪じゃないんだな』っていう実感しかない。


「なんてーか、『風邪』って名前には付いてても明らかに普通の風邪じゃない『おたふく風邪』とかみたいなものかもね」


玲那が口にする。


確かに。そんな印象はあるかな。どんな感染症でも物理の壁を越えてまで感染することはないはずだから必要以上に恐れなくてもいいにしても、だからって軽んじていいものでもないと僕は感じた。医療従事者と高齢者を優先してワクチンの接種を急いでる状態らしいから、自分たちも打てるタイミングが来たらすぐに打とうと決心。


副反応のリスクはあっても、そのリスクと感染のリスクとを天秤に掛けて、感染のリスクを重視することにした。副反応についていろいろ言ってる人らもいるけど、やっぱり口だけで実際に自分たちでは保障制度を用意するわけでもない人たちのことは信用できないしね。


同じ後悔するにしても、自分でより納得できそうな形で後悔したい。


なにより、僕が沙奈子と一緒に暮らすことにした決断も、事件を起こした玲那を見捨てなかった決断も、


『そんな決断なんかできるはずがない』


と考える人にとってはまったく理解できないことだろうから。『ワクチンを打つという決断』についても、理解できない人には理解できなくて当然だと思うし、理解してもらおうとも思わない。僕は別にそういう人たちに理解してもらうために生きてるわけじゃないんだ。自分の人生を自分の意志で生きてるんだよ。逆に、


『ワクチンを打ったら二年以内に死ぬ』


なんて、そんな漫画やアニメの設定を信じる人がいることが僕には理解できない。そんなことが本当にできるなら、打ったその瞬間に死ぬわけじゃないけど、打ってから二年ですべての人が死に絶えるなんて薬を作れる技術があるなら、人間は今まで生きてなかったと思うよ。


だって、致死率がものすごく高い毒なんてそれこそ無数にあるんだからね。


しかも、医療関係者がもうワクチンの接種を始めてる。それが二年でみんな死ぬなら、医療関係者がまずみんな亡くなって医療が成立しなくなって、医療体制そのものが何百年も昔に戻って、それこそ他愛のない病気で亡くなる人がものすごく増えて、どのみち破滅的な状況になるんじゃないかな。


実際にそんなことが起こるのか、二年なら十分に見届けられるよね。



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