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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百四十四 SANA編 「若者」

八月十九日。金曜日。晴れ。




『私、洋裁をちゃんと勉強できる学校に行こうかなと思ってる』


そう言いだした沙奈子は、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんに教えてもらいながら、パソコンでいろいろ調べ始めたみたいだ。


すると、『人生部の活動』が終わって、絵里奈と玲那が帰ってきてからみんなでリビングに集まって、


「京都にもあるんだけど、どっちかと言うとデザインが主で、洋裁の技術はそこまでって感じみたい。大阪に服飾の専門学校があって、そっちの方が技術については学べそう」


だって。


しかも、


「大阪の方だったら電車一本で行けそうだし、たぶん、京都のよりも時間はかからないんじゃないかな」


とも。確かに、僕も見せてもらったけど、京都の学校の方は私鉄を二回乗り継いでって感じらしくて、明らかに手間だった。京都って、市内を移動するのには何気に不便な時があるんだよね。


だけどそれ以上に、洋裁の技術をしっかりと学ぶには大阪の服飾専門学校の方がいいらしい。しかも通うのも通いやすいとなれば、一番の候補になった。


他にも、『洋裁教室』的なものはいくつかあったものの、ホームページを見る限りではあくまで趣味の延長線上の気軽に楽しむことを目的にしてるって印象で、沙奈子が求めてるものとは違うのかも。


「授業料は高そうだけど、私がこれまで貯めてきたのを使うから、行きたい」


そう言って僕を見る沙奈子は、もう、僕に守られてるだけの『小さな子供』じゃなかった。自分の人生を自分で切り拓いていこうとする『若者』だと感じた。わざわざ自分で電車に乗って遠くまで行こうなんてこと考えもしてなかったのに、それをしようと思えるようになったんだってことか。


『ああ……、この子もちゃんと成長してるんだな……』


改めて実感する。まだまだあどけない部分もありつつも、『自分のことは自分で』って考えられるようになってきてるんだ。


だから僕は、


「お金のことは心配しなくていい。僕が出すよ。沙奈子が今持ってるのは、自立してからなにか必要になった時に使えばいいしさ」


『父親』としてそう言った。そう言わずにいられなかった。


そうだ。彼女がもしこの家を出ていったら、お金が必要になることもたくさんあると思う。彼女自身が稼いだお金は彼女自身のために使えばいい。僕はこの子を育てていくと決心したんだから、僕のお金を沙奈子のために使うのも、あくまで『僕のため』だ。僕がそうしたいからそうするだけなんだ。


「ありがとう……、お父さん……」


沙奈子らしい笑顔を浮かべて、彼女はそう言ってくれた。



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