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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百二十九 SANA編 「在り方を上書き」

八月四日。木曜日。晴れ。午後から夕立ち。




秋嶋あきしまさんがアニメのことでムキになっていた件については玲那としてはもう気にしてないそうだ。もちろん、『わだかまりがない』と言ったら嘘になるそうだけど、だからと言って彼が自分を助けようとしてくれた事実までなかったことにはできないって。


玲那は本当に優しい子だな……。


ただ、秋嶋さんと連絡を取ろうとしても、メールを送ってもメッセージを送っても反応がなくて。ブロックされてるとか着信拒否されてるとかそういうのじゃないらしいにしても、とにかく返信がない。喜緑さんたちが部屋を訪れようとしても居留守をつかわれてしまうみたいで……。


人間の感情って、一度拗れると、本当に戻すのが難しくなる。だからと言って強引にどうにかしようとすれば余計に意固地になってしまいそうだし。


その一方で、ブロックとか着信拒否されたりとかじゃないみたいだという点で考えると、実は彼の方にも未練はあるんじゃないかなって気がする。何か、そういう気持ちに素直になれるきっかけでもあればと思うんだけど……。


これについて結人ゆうとくんは、


「向こうが拒否ってんなら、ほっときゃいいんじゃないかって、俺なんかは思うけどな……」


と口にする。それに対して千早ちはやちゃんは、


「それじゃ気持ちが収まんないから難しいって話なんだよ。玲那さんにとってはそれこそ恩人だしさ。そりゃ私だって、玲那さんが歩み寄ろうとしてんのに向こうがウジウジしてるってんならほっときゃいいじゃんって思わなくもないよ?。てか、普通にムカついてる。玲那さんが優しくしてくれてんのに何やってんだ?って思う。けどさ、そうじゃないんだよ。玲那さんが思ってるのはそうじゃないんだ。大事な友達だから、そんな簡単に切り捨てられないんだよ。私はそう思う」


だって。彼女の器の大きさをすごく感じるな。山仁やまひとさんを、星谷ひかりたにさんを、イチコさんを、大希ひろきくんを間近で見てきて、自分のことを受け止めてもらえて、それで心の余裕を持ててるんだなって。沙奈子と親しくなれる以前の彼女だったら、それこそ、『ふざけんな!』ってキレてそうな印象があるのに、今ではそんな風にキレることがほとんどなくなった。


これも、人間が出逢いによって変わっていくことがあるっていうのを示してるんだろうなって実感なんだ。


確かに本質そのものは変わらないのかもしれない。千早ちゃん自身には昔のままの意地悪で乱暴な部分は残ってるんだろうって思う。


だけどね、『そういう部分を誰かにぶつけないようにする』ことはできるようになったんだ。それも確かなんだよ。そうやって自分の在り方を上書きしていくことは決して不可能じゃないと感じるんだ。



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― 新着の感想 ―
[良い点] 千早は、どんどん成長しているね。 さらに魅力的な女性になっていくと思う。
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