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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百二十八 SANA編 「いい仲間だった」

八月三日。水曜日。晴れ。午後から夕立。




前のアパートの住人たちの多くは、僕たちとは逆におおむね順調に恋を育んでいるらしい。隣室だった秋嶋あきしまさん以外は。


「あっきーはねえ……。悪い奴じゃないんだけど、アニメに対するスタンスがね……」


玲那は、秋嶋さんのことを話す時は、なんだかとてもつらそうになる。だからつい、


「秋嶋さんと仲直りしたいと思ってる……?」


問い掛けてみた。そんな僕に、


「まあね……」


寂しそうに微笑む彼女に、胸が痛むのを感じた。彼女にとっては秋嶋さんは『恩人の一人』だ。彼女が事件を起こして世間から激しく攻撃を受けた時にも、玲那のことを気遣ってくれて守ろうとしてくれた『アニメ仲間』の一人なんだよ。なのに、そのアニメの評価について意見が衝突して、意固地になってしまって、それから絶縁状態になってしまった。


僕はアニメのことはよく分からないから『どうして?』とついつい思ってしまいそうになるけど、当人にとっては譲れないものがあるんだろうなというのは分かるつもりなんだ。


だけど、それでも、せっかくの『仲間』としての関係を台無しにしてまで拘らなきゃいけないことなのかなって思うとね……。


それに、その衝突の原因になったアニメ以外では、二人はとても気が合ってたように僕も感じてた。好きなアニメもかなりの部分で共通してたみたいで、いつも熱く語り合ってたのを知ってる。そこまでの関係が壊れてしまうほどのものなんだろうか……。アニメって……。正直、僕にはまったく理解ができないな。


他の『仲間たち』は、喜緑きみどりさんも含めてお付き合いしてる相手もできたのに、秋嶋さんだけが今もそうじゃないらしい。もちろん、お付き合いしたり結婚したりすることだけが幸せというわけじゃないのは事実でも、玲那を見てるとやっぱり感じるんだ。


『いい仲間だったのに……』


って。『付き合う』とかそういうのを抜きにしても、一緒にいるのがとても楽しそうだった。『お似合い』だと僕も思ってたんだよ。玲那が事件を起こしてもちゃんと守ろうとしてくれたことも含めて、秋嶋さんになら玲那を任せてもいいかなと思わされないでもなかったんだけどな。


もちろん、『気が合う』だけでその先の人生をずっと一緒に過ごせるとは限らない。喜緑きみどりさんと鷲崎わしざきさんだって、お互いに相手を大事に思ってるらしいのに、『大事に思ってる』からこそ喜緑さんは結婚には踏み切れていないみたいで。鷲崎さんの方が年上で、しかも血の繋がらない子供を育ててるという大変な事情もあるけど、そのこと自体は喜緑さんも受け止められてるらしいのに、


『自分の収入が少ないから』


という部分で引っかかっているらしいというのは、ね……。



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