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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百二十五 SANA編 「僕のやりたいこと」

七月三十一日。日曜日。晴れ。




昨日も午後から沙奈子たちは水族館に行ってた。篠原優佳しのはらゆうかさんは残念ながら習い事があるから行けないけど、本人も残念そうにしてたけど、


「仕方ないから」


と、寂しそうに笑って帰っていった。


正直、『人生部』の活動の方が彼女にとっても大きなメリットを生むということを証明できれば習い事じゃなくてこちらに集中することもできるんだろうなとは思いつつ、証明ができない以上は彼女の両親を説得する材料がないというのも事実だ。


だからこうやって、できる範囲内で参加して、それ以外は習い事という形で妥協するしかないんだろうな。


何もかもドラマや映画のように自分の思い通りにはできない。そんなムシのいい話はない。だからこそ、可能な範囲内で妥協して両立することを目指す。じゃないと、今の形で参加することもできなくなるかもしれない。それじゃ駄目なんだ。


この世が何でも自分の思い通りにいくわけじゃない以上は、こうやってどこかで折り合いを付けることを心掛けなきゃいけないよね。一真かずまくんと琴美ことみちゃんの境遇についても、現状では警察とかが介入するまではできないんだから、可能な範囲で妥協するしかないんだよ。どんなに不快でも。無責任に勇ましいことを言う人たちは、何もしてくれない。一真くんと琴美ちゃんを助けてくれるように行動を起こすわけでもないし、真に受けて本人が行動を起こしてかえって拙い状況に陥っても責任も取ってくれない。


だからあてになんかできない。


それに、何でもが自分の思い通りにならなくたって、幸せは掴むことができる。一真くんも琴美ちゃんも、人生部として活動している間はとても穏やかな様子で幸せそうだ。琴美ちゃんは相変わらず無表情だけど、でも少なくとも『険しい表情』はしていない。穏やかな気持ちでいられてるのは分かるよ。沙奈子の様子をこれまでずっと見てきたからか、表情としてはほとんど現れてなくても顔つきとか目つきとかでかなりのことが分かるようになったんだ。


沙奈子、千早ちはやちゃん、大希ひろきくん、結人ゆうとくん、一真くん、琴美ちゃん。つらい経験をしてきたみんなが安らいだ気持ちになれる場所。それを守っていくのが僕たちの役目だよ。こうして安らいだ気持ちになれる場所があれば、この世だってそんなに悪いところじゃない。それは僕自身が実感してること。この家が、今、僕に幸せを実感させてくれる。この家があるからこそ、僕は生きていられる。


この分かりやすい事実を守ることが、僕のやりたいことだ。



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