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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千二百二十三 SANA編 「悩むことはない」

七月二十九日。金曜日。晴れ。




沙奈子と二人で暮らしてた頃からそうだったけど、僕は『躾』という言葉が嫌いだ。沙奈子を虐げてた僕の兄をはじめとした大人たちが好んで使ってた言葉だったらしいしね。そして、結人ゆうとくんを虐げてた大人たちもそうだったらしいし、今現在、一真かずまくんと琴美ことみちゃんの両親も好んで使ってるそうだ。


結局、自分の憂さ晴らしの言い訳にそれを使ってるだけだというのがすごく分かる。


だから僕は沙奈子や玲緒奈れおなを『躾け』ようとは思わない。そんなことをする必要をまったく感じないし、実際にその必要もなかった。これは、山仁やまひとさんも同じ。


「私は一弧いちこ大希ひろきを躾けたことはないんです」


と言ってた。それが今、僕もすごく実感できる。子供の普段の言葉遣いや態度は、結局、親や身近な人間の振る舞いの真似だというのが分かるんだよ。


玲緒奈はまだ感情のままで動いてるけど、それは彼女が今、僕たちの振る舞いを絶賛学習中だから。彼女の中に落とし込む作業の真っ最中だから。言葉を覚えるのと同じようにして習熟中なんだ。未熟だから今のところは感情が先に立ってるけど、たぶん、言葉を上手く操れるようになる頃には、自分の伝えたいことをちゃんと言葉にできるようになる頃には、僕たちの振る舞いをラーニングできると感じてる。


その上で、適切じゃない部分、上手くできてない部分があれば、随時、丁寧に言葉でアドバイスしていけばいいって分かったよ。言葉が理解できるようになればね。


もちろん、言葉に込められた意図まで理解できるようになるまでには時間がかかるだろうから一度や二度では伝わらなくても、僕たちが実際の振る舞いを交えて何度も諭していけばいい。そしてそれ自体が、『相手に丁寧に意図を伝えるという振る舞い』の手本にもなるし。


そこで手を抜こうとしてすぐに結果を求めようとすれば、子供も、すぐに結果が出るのが当たり前だと考えるようになるだろうな。そうすれば、すぐに結果が出ないと癇癪を起して乱暴に振る舞ったりするようになるんじゃないかな。


『自分は悪くない』と思いたい親はそういうことを認めようとしないだろうけど、僕は自分が沙奈子や玲緒奈を育ててみて、今までの疑問に答が示されていってるのを感じてるよ。『何故?』が氷解していくのを感じてる。兄がどうしてあんな人間になってしまったのか、どうすれば自分の子供を兄のような人間にせずに済むのか、すごく分かってきた。


だから僕は、『子育て』で悩むことはないと思う。ただただ、僕たちの家庭の平穏を守ることに専念すればいいだけで。



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