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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2220/2601

二千二百二十 SANA編 「山下家の家長として」

七月二十六日。火曜日。晴れ。




かつての僕は、本当にただ、『死んでないから生きてる』だけだった。楽しみもなく、目的もなく、目標もなく、いつか自分が死んで楽になれるまでただただ時間を浪費するだけの存在だった。誰かの役に立つとか、誰かのために生きるとか、そんなこと、考えもしなかった。


沙奈子が僕の部屋に捨てられるまでは。


だけど、沙奈子が来たことで、僕は否応なしに猛然といろいろなことを考えなきゃいけなくなった。この子を死なせないためには何をどうしなきゃいけないのか、考えざるを得なくなった。


最初はそれが大変で、負担で、苦痛で、頭がおかしくなりそうだった。なのに、沙奈子が『生きている人間』なんだってことに気付かされてからは、それをはっきりと自覚できるようになってからは、彼女と一緒に暮らしていくために、生きていくために、何をどうすればいいのかを考えることが当たり前になっていったんだ。ううん、はっきり『考えること自体が楽しく』なっていったんだと思う。彼女と一緒に幸せになるために必要なことを考えるのは、間違いなく楽しいんだ。楽しいことなんだと思えるようになっていった。


だって僕も沙奈子も『生きている人間』なんだよ。ロボットでも家畜でもない。人間として生まれて人間として生きてるんだ。じゃあ、人間としてどう生きるのか?ってことも考えなきゃおかしいよね。考えなくても生きていけるなら、人間はこんなに大きな脳を持つ必要はないはずなんだから。それこそ犬や猫と同じように生きられる程度の脳があればよかったはずなんだ。


もちろん、誰もが完全にそれを活かしきれるわけじゃないのも事実だと思う。そんなに上手くはいかないのも当たり前だと思う。でもそれは、僕自身が何も考えずに生きていていい理由にはならない。


僕は、僕と、沙奈子と、絵里奈と、玲那と、玲緒奈れおなとで幸せになるために、幸せでいられるために、いろいろなことを想定して対処できるようにするために、考えて、備える。そのために僕の脳はある。誰かの言ってることに振り回されて踊らされて喜劇を演じるためにあるんじゃないんだ。僕は僕の人生を命を生きるためにこそ、自分の能力を活用して家族を守りたい。


僕の家族がカルト宗教とかに救いや癒しを求めなくても済むように備えたいんだよ。


ここにいればちゃんと人間として生きられる環境を用意したい。自分が人間であることを否定されない環境を作っていきたい。それに必要なことを考えなきゃね。


それが僕の役目だ。山下家の家長としての。



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