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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2215/2601

二千二百十五 SANA編 「家族を守るための」

七月二十一日。木曜日。曇りのち雨。




今日から沙奈子たちは夏休み。そして、『SANA』でも交代で夏休みを取ることになる。イチコさんと田上たのうえさんは八月の第一週と第二週をそれぞれ希望しているから、絵里奈は七月の最終週である次の月曜日から金曜日まで夏休みを取り、玲那は八月の第三週、星谷ひかりたにさんは八月の第四週に休みを取ることになった。


だけど沙奈子に、


「夏休みはどこにする?」


と絵里奈が聞いたら、


「……別に、要らないかな……」


だって。まあ確かに、沙奈子自身は別に出勤とかしてるわけじゃないし、あくまで本人の好きな時間に好きなようにドレスを作ってもらってるだけだからなあ。


しかも普段の勤務形態自体、『平日は夕方五時から夜の八時までの三時間』『土曜日は昼の一時から夕方五時の四時間』って建前になってるし。そして賃金は、最低賃金近くの九百五十円。これでも一ヶ月に七万円強のバイト代になる。だけど沙奈子にとっては金額の問題じゃない。


『ドレスを作りたいからそうしてる』


だけなんだよね。


その一方で、沙奈子が作るドレスがあってこそなんだから、そもそも沙奈子のいない『SANA』なんて何の意味があるのか分からない。しかも、


『自分の名前を冠してる企業が作られてる』


ことは彼女にももう分かるだろうし、『自分が必要とされているという実感』はあるんじゃないかなとは思うんだけどな。だから、僕たちとの関係が拗れたりして沙奈子が他に救いや癒しを求めたりしない限りは大丈夫なような気がする。


そうなると結局は、僕たちが彼女にとって必要とされるような家族でいられるかどうかって話になるのか。


この点ではそれこそ、彼女をただの道具や家畜のように支配しようとするつもりはまったくないから、彼女をただのペットやお人形のように愛玩するつもりはまったくないから、大丈夫だとは思うんだけど。


すると今度は、玲緒奈れおなの方か。玲緒奈にも、


『自分が必要とされている実感』


を与えてあげることができるだろうか。


どんなに大切にされてても、大希ひろきくんが、


『みんなはやりたいことを見付けられてるのに自分だけがそれを見付けられていない』


と感じて自己嫌悪に陥ってしまったりしたこともあったくらいだから、そのタイミングで甘言をもって誘われたりしたら危なかったのかもしれない。


玲緒奈ももしかしたらそんな時期があったりするかもね。だからこそ、その時に他に助けを求めなくても答を求めなくても済むような環境を作れてるかどうかが大事なような気がする。


『面倒だ』とか『大変だ』とか思うかもしれないけど、『大切な家族を守るための備え』だと考えるなら、必要なことだと思うんだけどな。



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