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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百九十六 SANA編 「育てるのが難しい」

七月二日。土曜日。晴れ。




昨日の最高気温、この辺りでも三十八度だったそうだ。玲緒奈れおなの散歩をやめておいて正解だったと思う。今日は昨日ほどじゃなかったけど、


「ぷーう!」


散歩のために一階に降りると玲緒奈が三畳間の方を指差しつつ身を乗り出し声を上げた。


「プールの方がいいの?」


尋ねると、


「うん!」


大きく頷いてくれた。そういう形で自分の意志を示すことができてきてる。一歳九ヶ月を過ぎたところで、もうすぐ、『魔の二歳児』とも呼ばれる時期が近付いてるんだろうけど、僕は別にそれを心配はしていない。心配する必要を感じてない。イチコさんも大希ひろきくんも、『魔の二歳児』と呼ばれるような時期があった実感はなかったと山仁やまひとさんは言ってた。僕もたぶん大丈夫だろうなという予感がある。


だって僕は、玲緒奈の我儘くらいで狼狽えるつもりもないし、何より、彼女が自分の意志を伝えようとしてるならそれを疎かにするつもりもないんだ。いくら手間がかかってもいい。そこで丁寧に相手の意図を酌もうとする姿勢を実際に示すことの重要性を今まさに感じてるところだから。


玲緒奈は確かに我が強くて気難しい一面がある子かもしれない。だけどそれは逆に、自分の思ってることをちゃんと僕たちに伝えようとしてくれてる姿勢の表れだとも思うし、僕たちが彼女の伝えようとしてることを酌もうとする姿勢を示せてる何よりの証拠だとも言えるんじゃないかな。だから、我が強く気難しい一面はありつつも、酷く泣き喚いたりということはここまでほとんどなかった。


『育てるのが難しい』


みたいに思うことはなかったんだよ。だって、大人でも『難しい人』っているよね?。ほんの些細なことで、それこそこっちからはその理由がほとんど掴めないようなことでいきなり機嫌を損ねる人って実際にいる。僕が以前勤めていた会社の上司もそういうタイプだったし、今の会社に仕事の依頼をしてくるクライアント側の担当者にもそういうタイプの人がいて、わけも分からずいきなりキレて声を荒げることもあったんだ。


そんな人に比べれば、玲緒奈は僕と絵里奈の子供で、そして赤ん坊だったから見た目にも可愛げがあって、そういう理不尽なところも許せた。可愛げもない大人で赤の他人な上司やクライアント側の担当者と違ってね。


上司やクライアント側の担当者については、いくらムカついても露骨に反発することもできない。結局はこっちが折れるしかない場合がほとんどだ。だったら、可愛い我が子相手ならまだそれよりずっと楽だと思うんだ。だからこそ、


『相手の伝えようとしてることに根気強く耳を傾けようとする姿勢』


を手本として示す必要があるんじゃないかな。将来、そういう姿勢がとても大切になる時がくるから。



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