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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百五十六 SANA編 「失いたくないもの」

五月二十三日。月曜日。晴れ。




この前の土曜日は、授業があったことに加えて天気が芳しくなかったから念のため水族館には行かなかった。その分、みんなで三階で過ごしてた。


一真かずまくんも琴美ことみちゃんも、かなり慣れてきてくれた感じがする。それでいて二人とも図々しいって印象を持ってしまうような振る舞いをしない。両親がまさにそれで、そんな両親の在り方を『好ましくないもの』と認識できたからこそ、同じになってしまわないように気を付けてるんだろうなって気がする。


そして、


『両親の振る舞いは好ましくないものだ』


という認識を持てたのは、近所の人たちの振る舞いと、そんな近所の人たちに迷惑を掛けている両親の振る舞いとを見比べられたのが大きかったのかもしれない。


近所の人たちが二人に気遣ってくれてたことに付け込んでお小遣いをもらわせたりお年玉をもらわせたりして、それを、


「子供の金の管理をするのは親の役目だからな」


って言って取り上げて自分たちの遊興費に使ってしまったというのがあったりしたそうで、


「殺してやろうかと思ったよ……」


一真くんがそう口にしたんだ。


「あ~、それは私も何度も思ったね」


「俺なんか、今でも顔を合わせたら咄嗟にぶっ殺しちまうかもって思ってる」


千早ちはやちゃんと結人ゆうとくんがすごく共感してた。対して大希ひろきくんは、


「僕はそんなの思ったことないし、想像できないな……」


だって。


沙奈子はそれについては発言しなかったけど、実は彼女の中にも『激しい気性』が隠れていることを僕は知っている。左手甲側の手首には、今はもうほとんど分からなくなりつつもよく見ると傷跡が残っていて、それは、児童相談所の誤解で僕と引き離されそうになった時に彼女自身がボールペンで何度も自分の手を突いた時のものだ。


おとなしくて真面目そうな沙奈子にもそういう部分があるんだよ。ましてや結人くんに至っては、それこそ実の母親に殺されかけた上にその時の記憶がまだ残ってるそうだ。だったら『咄嗟にぶっ殺しちまうかも』なんて口にしてしまうのも無理はない気がする。


もちろん、そんなことはあってほしくないし、もし実の母親と再会するようなことがあっても実行してほしくないと思ってる。今、こうして穏やかな毎日を送れてるのに、そのすべてを台無しにしかねないのは、玲那の事件で思い知った。結人くんも、その経緯については沙奈子たちから聞いて知ってる。『復讐は何も生まない』とは言われるけど、今の彼の場合は、『復讐はせっかく手に入れたものを台無しにする』って言った方が近いだろうな。


一真くんや琴美ちゃんにとってもそういう『失いたくないもの』を提供できたらとすごく思う。


そしてそんなこともありつつ、新しい事務所の準備も始まって、玲那がそれの監督をするために向かうようになったのだった。



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