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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百三十四 SANA編 「なんじゃそりゃ!!」

五月一日。日曜日。雨のち曇り。




昨日、一真かずまくんは、学校を終えた後でいったん家に帰って両親の食事を用意してそれからうちに来た。歩いて。


「あいつらが自転車使うから……」


乗り回してた放置自転車が押収されたからということで、一真くんの自転車を使うことにしたらしい。だけど一真くんの自転車も、古くなって買い替えるからってことで近所の人が譲ってくれたもので、正直、かなりくたびれた印象のものだった。一応、防犯登録と自転車保険についても手続きしてくれてたそうだけど。


一真くんと琴美ことみちゃんについては、その近所でも気にかけてくれてる人はいて、食事をご馳走してくれたり、着なくなったままサイズアウトした服とかを譲ってくれたりもしたそうだ。一真くんが通ってた中学の制服さえ、近所の人のお孫さんが卒業したことで要らなくなったものを譲ってもらったそうで、でも三年生になる頃には明らかにサイズが合ってなかったりしたらしい。


実は、児童相談所が動いたのも、近所の人の通報だったみたいで。


『児童相談所への通報』と聞くと僕にはあまりいい思い出がないけれど、一真くんと琴美ちゃんの件についてはちゃんとしたものだったんだな。僕が沙奈子のことで通報された時には、ただの『嫌がらせ』だったけど。


一真くんと琴美ちゃんがここまでなんとか無事にこれたのは、そういうこともあってのものなんだろうな。ただ、近所の人としてもそれ以上のことはできなくて……。


当然だよ。誰だって自分の家族を犠牲にしてまで他所の子を助けるなんて普通はできない。むしろできる範囲で何とかしようとしてくれてたことを素晴らしいと僕は思う。だから僕たちも、僕たちにできる範囲で力になりたいと思う。


なのに、今日、うちに来た一真くんは自転車を押してこなくて。


「どしたん?」


千早ちはやちゃんが尋ねると、


「あいつらがパチンコ屋に乗っていって、そこで盗まれた……」


だって。


「はあ!?。なんじゃそりゃ!!」


そう声を上げた千早ちゃんの気分は、それを聞いた僕たち全員の気分だったと思う。子供の自転車を借りてパチンコに行くのは、まだ分かる。納得できないけど、家族だったらまだね。だけど、他所の人の自転車を盗むという行為はまったく理解できないよ。どうしてそんなことをするんだろう……。


それを聞いた玲那も、


「自転車って、やられるときは一瞬だからね。その所為で私の『黒龍号』も三代目なんだし」


って。


本当に情けない。なんでそんな人になってしまうのか、ものすごく情けない。確かに僕の兄も、他人からお金を借りて返さずに逃げ回るような人だったけどさ……。



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