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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百三十二 SANA編 「身元引受人として」

四月二十九日。金曜日。雨。




何だか今日は寒い気がして、久しぶりにエアコンで暖房を点けた。すると、場所によっては雪が降ったところもあったらしい。もう五月も目前だっていうのに。


そして今日は『昭和の日』。ゴールデンウイークの初日だけど、沙奈子たちは明日も学校がある。なので結局、いつものように家でおとなしくしてるだけのゴールデンウイークになると思う。


同時にいつものように三階に沙奈子と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと結人ゆうとくんが集まって、さらに今は、一真かずまくんと琴美ことみちゃんも来てた。


でも、今日は一真くんは自転車を押してきてたみたいで、事務所の前の空きスペースに、千早ちゃんたちの自転車と一緒に止めてもらってる。というのも、昼前に一度家に帰って両親の食事を用意しなきゃいけないらしいんだ。


それまでは、自主勉強を。


琴美ちゃんの勉強も見てあげてるんだけど、どうやら彼女、あんまり勉強が得意じゃないらしくて。だけど沙奈子と千早ちゃんが、星谷ひかりたにさんにしてもらったのと同じに琴美ちゃんに教えてあげてた。彼女がすぐに理解できなくても、丁寧に、丁寧に、何度も根気強く教えてあげてくれたんだ。自分がしてもらえたことをこうやって他の子にもしてあげられる。そこに意味と意義があると感じる。ここに星谷さんはいなくても、星谷さんのやり方は確かに受け継がれてた。


そうして昼前になって、一真くんは両親の昼食を作るために自転車でいったん家に帰って……。


なのに、彼は戻ってこれなかった。


「一真の両親、逮捕されて、それで一真が身元引受人として迎えに行くって……!」


千早ちゃんのスマホに彼から電話が入ったんだ。


「ええ……!?」


驚いたのと同時に、僕はこの時、内心では少し喜んでしまってた。これで両親が勾留されでもしてくれたらそれこそ児童相談所の方で保護されてくれると考えてしまったんだ。


だけど、


「なんか、放置自転車を勝手に二人乗りしててそれで警察に見付かって逮捕されたって。一応、取り調べは受けたけど今回は厳重注意だけで済んで、でも身元引受人は必要だったから一真がそのまま警察に向かうってことみたい」


だって。


「なにやってんだ……?」


結人くんが呆れたように声を上げる。僕も、口には出さなかったけど同じことを思ってしまってた。高校生の子供がいるようないい歳をした大人が放置自転車を、しかも二人乗りしてて逮捕されて、子供に身元引受人をさせるって、意味が分からないよ……。


「……」


なのに琴美ちゃんは無表情のままで黙ってて、少しも驚いたり不安そうな様子もなくて。


彼女にとっては別に驚くようなことじゃないんだろうなって察せられてしまった。


警察に逮捕されても、いや、正しくは任意同行かもしれないけど、だとしても小学校二年生の我が子にさえ驚いてもらえない両親、か……


僕は、ふんすふんすと鼻息を立てる玲緒奈れおなを抱き締めながら、何とも言えない気分を感じてたのだった。



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