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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二千百二十一 SANA編 「沙奈子の存在は」

四月十八日。月曜日。晴れ。




今日は結人ゆうとくんの誕生日。千早ちはやちゃんがケーキを焼いて、つつましいながらみんなで祝う。彼自身は、


『別に、要らねえけどよ』


と言いつつも。


そして沙奈子たちは元気に高校に通ってる。今のところは特に問題もなさそうだ。


他の生徒とは距離はあるけど、沙奈子にとってはその方がありがたかった。だって、学校で他の子に構ってもらえなくても家に帰れば自分が受け入れられてる実感はあるから。


大希ひろきくんの時もそうだったけど、学校ではカウンセリングも受けつつも、それはあくまで状況を悪化させないようにするだけのもので、山仁やまひとさんがまず大希くんと向き合うのが先だった。山仁さんが対処できないとなったらもっと本格的な対応をすることになるはずだったんだ。


でも実際には、山仁さんで対処できてしまったから、それ以外は必要なかった。


あ、ちょっと違うかな。


『余計なことをしないという形でサポートしてもらえた』


と言った方がいいのか。


そうなんだ。『余計なことをしない』というのも立派なサポートになることもあるんだと思う。


ましてや『生徒』は『子供』だからね。カウンセリングの勉強をしたわけでもない、ただの『素人の子供』なんだ。そういう子に、沙奈子のような事情を抱えた子供の対処が巧くできると考える方がどうかしてるはずなんだ。


だってそうだよね?。沙奈子みたいな事情を抱えた子供にどう対処すればいいのかを、習ってないんだよね?。


『それを経験することで学ぶんだろ!』


って言うかもしれないけど、仕事で、仕事のやり方も教えずに新人に勝手にやらせてそれで大変な損害を出してていいの?。沙奈子がイジメられて不登校になったりしたらそれは『大変な損害』だよ?。そうなった時に誰が責任を取るの?。責任を取らない学校があるから問題になってるんじゃないの?。ちゃんと責任を取ろうとする学校は、そもそもそんな対処を生徒にやらせようとはしないと思うけど?。


沙奈子がこれまで通ってた小学校も中学校もそうだった。『事情を抱えた生徒』のフォローは学校の役目であって、生徒にやらせるなんてことはしなかったよ?。


『それを経験することで学ぶんだろ!』とか『失敗することで学ぶんだろ!』とか、失敗した時の責任を、『誰が』『どうやって』取るのか教えてよ?。イジメ加害者は必ず責任を取ってきたの?。取ってないんじゃないの?。『イジメはイジメられる側にも責任がある。原因がある』とか言って。どうしてその事実と向き合おうとしないの?。


だからそっとしておいてくれる方がずっと助かる。学校では構ってもらえなくても、その分、家では沙奈子の存在は僕たちにとっては欠かせないものだから。沙奈子がいない山下家は、山下家じゃないよ。



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