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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2102/2601

二千百二 SANA編 「頑張ってる母親の姿を」

三月三十日。水曜日。晴れ。




月曜日に水族館に行ったのは、土曜日に雨が続いてしばらく行けなかったからというのもあるけど、なんだかまた『新型コロナウイルス感染症』の状況が芳しくなくて、もしかすると水族館がまた休館になるかもしれないという理由もあってのことだった。だからなるべく行けるうちに行っておいて、デザイン案のストックを確保しておこうということに。


でも本当は、デザインを煮詰める時には改めて着想を得た生き物を見てって形を取ってるそうだから、『初期案』をそのまま煮詰めていくわけじゃないそうだ。


その辺りも、水族館が休館になると影響が出そうだよね。SNSで動画とかは発信してくれてるけど、やっぱり動画で見るのと実際に現場に行って自分の目で見るのとは違うそうだし。


だから沙奈子としても、完成したデザインをあらかじめ作っておくことにしたらしい。ただ、そうして作っても後から見返すと『ここはもっとこうしたい』『ここはもっとああしたい』ってなってしまうこともあるって。


この辺りは、『クリエイターあるある』なのかもしれないね。本決まりになったはずの設計が、図面に起こしてる最中に変更になったりして最初からやり直しってことも、僕の仕事でもあるし。クリエイターのデザインと機械設計とでは違うとしても、『後から変更になって慌てる』というのはどちらでもあることって感じかな。


それでも、沙奈子は、デザイナーとしての意識みたいなものも芽生え始めていて、『よりいいものを』『より納得できるものを』目指す気持ちは持ってきてるみたいなんだ。


それはえてして『自己満足』に陥りやすいものだとしても、クリエイターというのはそもそも自己満足が基本だと僕も感じてる。クリエイターの自己満足を商品として成立させるのは、周りのスタッフの仕事なんだろうな。沙奈子にとっての絵里奈や玲那がまさにそれなんだと思う。この三人で、『SANA』のドレスは成り立っているんだ。沙奈子が作りたいものを『商品』に落とし込んでいくのが絵里奈と玲那の役目だ。


沙奈子は三階で、絵里奈は二階のウォール・リビングで、玲那は一階の事務所で、それぞれ画面を見ながら真剣に検討してる様子に、


『ああ、プロだなあ……』


って思わされる。と、そんな僕の膝に座った玲緒奈れおなが、すごい貫録を見せながら、絵里奈の姿を見てた。『仕事をしてる母親の姿』を見てるんだ。これも玲緒奈にとってはいい経験になる気がする。


頑張ってる母親の姿を見るというのはね。



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