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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2032/2601

二千三十二 役童編 「私があれこれ言ったって」

一月十九日。水曜日。曇り。




「ヒロ、まだダメなのかな……」


実は昨日からテストで、沙奈子たちは昼までに帰ってきてる。だけど大希くんだけはそのまま自分の家に帰ってて……。学校には来てて普通にテストも受けてたそうなんだけど。それで、千早ちはやちゃんが、一階でお昼の用意をしながらビデオ通話越しに言ったんだ。


そんな千早ちゃんに、僕は、


「こういうことは時間が掛かると思うよ。千早ちゃんだって、すぐに沙奈子と仲良くなれたわけじゃないよね?」


そう言ったんだ。すると彼女は、


「確かに……!」


腑に落ちたらしい。事実、千早ちゃんが四年生の時に沙奈子にきつく当たってた件にしても、一応の和解から沙奈子と実際に仲良くなれるまでそれなりの時間が掛かったはずなんだ。


「だから今は、山仁やまひとさんに任せておこう。山仁さんならちゃんとしてくれるのは、千早ちゃんもよく知ってるんじゃないかな」


加えてそう言った僕に、


「ですよね~。私があれこれ言ったってしゃーないか」


ある程度は納得してくれたみたいだ。


今、千早ちゃんは、うちで夕食を食べていった後、大希くんの家までは一緒に帰って、そのまま寄らずに自分の家に帰ってるそうだ。お姉さんやお母さんの夕食の用意もしないといけないから。


受験を控えた彼女にそこまでやらせておいて、自分たちは千早ちゃんのために何もしないお姉さんたちやお母さんに対しては複雑な想いもないわけじゃないけど、ただ同時に、それまでの経緯を思えば逆に『何もしない』ことで彼女を煩わせないだけでも、実は大きな進歩なんだろうな。実際、今では怒鳴ったり殴ったりということがほとんどないんだって。しかも、千早ちゃん自身が言うには、


「私に全部やらせてることが気まずくて何も言えないみたいだね」


とのことで。


赤の他人は、お姉さんやお母さんに対して憤るかもしれなくても、当の千早ちゃんが気にしてないのならもうそれでいいんだと思う。それに、『千早ちゃんに全部やらせてることが気まずい』なら、そのこと自体が救いだし。そんな気まずさすら感じないようなら、そっちの方が深刻なんじゃないかな。


だから千早ちゃんの方は現状を見守るとして、今は、大希くんのことだ。


「ぶあーっ!。パパっ!!。クラゲ!!。クラゲ!!。カニーっ!。おにぎい!」


仕事しながら考え事してた僕にしがみついて、玲緒奈が声を上げる。最近はこうして覚えた単語をひたすら並べることにハマってるみたいだ。



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