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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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二百二 玲那編 「子供を守るために」

自分の娘を性的な目で見る?。そんな風に考える奴の方が気持ち悪い。そんなの、自分の娘だって思ってないってことだよね。僕にはどうしてそんな風に思えるのか分からない。


そう考えると、玲那に対してそういう気持ちになれないのも、同じことなんだろうなって思う。僕はすっかり、玲那のことも自分の娘だって思ってるんだろうなって感じた。とは言え、裸をまじまじ見るのも変だとは思うから見ないようにした方がいいとは思うけどさ。


その一方で、絵里奈に対しては、完全に女性として意識し始めてるのは感じる。役割を演じてるうちにそういう刷り込みができたのかなと思ったりもする。それが事実かどうかは分からないにしても、まあ、自分の奥さんを異性として見てる分には問題ないよな。たぶん。


ただ、絵里奈がその辺りをどう考えてるのか、まだはっきりしたことは聞けてない。彼女も僕のことを意識してる気はするんだけど、性的なことについてはどうなのか、いずれははっきりさせる必要はあるのかもしれない。何しろ僕は、絵里奈との子供だったらいてもいいかもって思い始めてたりするし。沙奈子に妹とか弟とかいてもいいかもって思ったりしてるし。


もっとも、具体的にはまだまだだけどね。まさかこの部屋で赤ん坊までは無理だって僕でも思う。


それに今は沙奈子を一番に考えなきゃ。絵里奈や玲那に僕を取られるかも知れないって考えて不安になってたくらいだから、赤ん坊とかきて僕と絵里奈の注意がそっちに行ってしまったら沙奈子がどう感じるかっていうのも未知数だ。


そんなことを考えながらお風呂から上がって服を着て、僕は沙奈子を膝に座らせて寛いだ。彼女はまた裁縫セットを出してきて続きをしてる。僕はスマホで物件探しだ。


でも今日もこれっていう物件は見付からず、10時前になったから寝ることにした。おやすみなさいのキスを交わし、沙奈子は莉奈と果奈を寝かしつけるようにした後、僕の胸に顔をうずめて寝たのだった。




水曜日の朝。ようやく穏やかな日常が戻ってきた気がした。ただ、不安はまだある。昨日の騒動は、結局あれから特に何か起こるでもなくうやむやになった感じだった。ただのケンカということで事件にはならなかったということだとしても、その時に聞こえた『さなこちゃん』という言葉が何を意味するのか分からないのは気持ち悪かった。沙奈子のことじゃなくて、なにかアニメとかドラマの登場人物の名前とかだったらいいんだけど…。


だから、沙奈子一人で留守番をさせることが怖かった、だけど、僕が帰るまでどこかにいるということもできない。とにかく戸締りとかしっかりやってもらうしかないのか。あと、僕もなるべく早く帰るようにしよう。


何だか不安が増えてしまった気がする。困ったなあと思いつつ、仕事に行った。


会社では仕事に集中して、早く終われるように頑張った。昼休みにそのことを話すと、絵里奈が言った。


「やっぱり私、沙奈子ちゃんのところから通います!」


続けて玲那も、


「私も!。沙奈子ちゃんのことが心配だから!」


って。当たり前みたいにそう言ってくれる二人が、言い方は変かもしれないけど頼もしかった。ただやっぱりずっと部屋を留守には出来ないということで、絵里奈は木曜日の夜から月曜日の朝まで、玲那は金曜日の夜から木曜日の朝までうちにいることになった。ただそれでも、平日の放課後から絵里奈か玲那が帰ってくるまでの間は沙奈子が一人になってしまうから、それをどうするかまた考えないといけなかった。


そこで僕は、厚かましいことを承知の上で山仁やまひとさんを頼ることを決心した。


夕食を食べるために社員食堂に言った時、山仁さんに電話して、絵里奈か玲那が迎えに行くまでの間、山仁さんの家に寄らせていただくことをお願いしてみた。もちろん、断られても仕方ないとは思いつつ。


でも、山仁さんの返事は、


「はい、いいですよ。沙奈子ちゃんだったらいつでも歓迎します。大希と遊んでていただければあの子も喜びますし」


と、実にあっさりとしたものだった。しかも、


「水曜日には星谷さんも来ますし、その時に一緒に勉強もどうですか?。よろしかったから私の方から星谷さんにお願いしてみますよ」


って。僕はもう、電話口で何度も頭を下げながら感謝するしかできないでいた。


本当に、こうやってみんなで子供を守るんだなって思った。たぶん昔は、こういうことがすごく自然に行われてたんだろうなっていう気がする。それがいつの間にかなくなって、他人の子供を預かるとか面倒を見るとかとんでもないって感じになって、廃れてしまったのかもしれない。何だか寂しいことだなって気がした。


今は一方的に他の人を頼るしかない僕も、いずれは困ってる子の力になってあげられればって素直に思えた。って言うか、あれ?、そう言えば僕のうちでも、千早ちゃんと大希くんにホットケーキ作りの場を提供してたりするんだっけ?。大希くんについては千早ちゃんのついでみたいにして来てるだけだから山仁さんは困ってるわけじゃないかもしれないけど。


そう考えてみると、まあまあ『持ちつ持たれつ』が成立してる…かな?。


それに気付くと急に少し気持ちが楽になった気がした。沙奈子は平日ずっとお世話になるわけだから完全には対等じゃないとしても、まるっきり一方的ってわけでもないもんな。とにかく、今日は仕方ないにしても明日からはそれでお願いしよう。


残業を終えて家に帰ると、さっそく玲那が沙奈子と一緒に「おかえりなさい」って言ってくれた。裸だったけど…。


「てへへ」って玲那が笑う。『てへへ』じゃないよまったく!。玲那のそういうのを認めたいとは思いつつ、ついつい頭を抱えそうになってしまう。


でもまあいいや。沙奈子が無事なら。ってホッとしてふと見たら、やっぱり机の上に『兵長』がいて、僕を睨んでた。あの目で睨まれるとドキッとするんだよなあ…。だからなるべく視線を向けないようにしよう。


それはさて置き、沙奈子と玲那に、明日から学校が終わったら大希くんの家で絵里奈か玲那が迎えに行くまで待ってるようにと話した。沙奈子も一人で家で待ってなくて済むのが嬉しそうだった。やっぱり寂しかったんだろうなって感じた。


電話で絵里奈にもそのことを伝えた。玲那は木曜日の朝までだから、明日はさっそく絵里奈に迎えに行ってもらうことになるからね。婚姻届けの証人をお願いしに行った時に一度行ってるから、家も分かってるはずだしちょうどいい。


「達さん、グッジョブです!」


絵里奈に褒められて僕もちょっと嬉しくなった。


とにかくこうして僕たちは、みんなで沙奈子を、子供たちを守っていくことを改めて確認したのだった。


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