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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
2019/2601

二千十九 玲緒奈編 「口で言っても理解できないよ」

一月六日。木曜日。曇り。




今日から沙奈子たちも学校だ。そして、中学校最後の三ヶ月。


沙奈子は今、十五歳。僕のところに来てからすでに五年。それどころかもうすぐ六年だよ。何をどうすればいいのかも分からないまま一緒に暮らし始めて、よくここまでこれたと思う。今の沙奈子の姿を見てると、あの頃のことがなんだか嘘みたいにも思えてしまうな。と言うか、ホントに幻みたいに現実感がないんだ。もしかしたら沙奈子は元々僕の子供で、あの頃のことは実は悪い夢だったんじゃないかって、そんな気さえする。


だけど、現実には、沙奈子は僕の実子じゃないし、戸籍上は兄の子なんだ。そして僕は絵里奈と結婚して、玲緒奈れおなが僕の実子なんだよ。間違いなくそれが事実。


それでも、沙奈子はもう僕にとっては実の子と変わらなくて、玲緒奈にとっては『お姉ちゃん』なんだ。


「ちゃーっ!。うっぶ!。ちゃーっ!。ぶるるるる!」


沙奈子が制服を着て学校に行く用意をしてると、玲緒奈が床にお尻を着いたまま脚だけでずりずりと前進。沙奈子の方へ迫っていった。


「あはは、なにそれ♡」


玲那がその光景を見て笑う。沙奈子も、


「どうしたの?。玲緒奈」


笑顔で問い掛けた。すると玲緒奈が沙奈子の脚を掴んで立ち上がったらスカートの中に頭が入っちゃって、


「ぼえーっ!。ちゃーっ!。あぶるるる!。うばーっ!」


叫びながらスカートの裾を掴んで持ち上げて顔を出したと思ったら、隠れるようにスカートを戻して。


だけど沙奈子は、気にするでもなく、玲緒奈の好きにさせてくれた。


そうだね。玲緒奈にとっては何も悪気があってのことじゃない。ただ遊んでるだけだ。しばらくそうして好きにさせてると、すとんとその場に座り込んで、


「うっぷ!。うっぷ!。ばるるるる!」


また声を上げながらお尻を着いたままずりずりと前進。今度は玲那の方へ向かった。


「可愛い~♡」


その様子に絵里奈がメロメロの笑顔に。さらに玲那も笑顔で、


「ほへえひゃんほほほへひははは~♡」


敢えてスマホは使わずそのまましゃべったからそんな音にはなったけど、僕の耳には、


「お姉ちゃんのとこへ来たか~♡」


ってちゃんと聞こえた気がした。


これが、僕たちの家庭のいつもの光景。玲緒奈が沙奈子のスカートの中に隠れるのも、これまでにも何度もあったことだ。彼女にとってはトンネルと同じようなものなのかもしれないね。


沙奈子もそれを嫌がらないから、任せてる。どうせ今だけのことだって分かるし。


やっていいこと、悪いこと。それも、言葉がちゃんと分かるようになったら教えていけばいい。逆に、今はまだ分からないんだから、当然、口で言っても理解できないよ。だから、


『やっちゃいけないことは最初からできないようにしておく』


ようにしてる。口に入れたら駄目なものも、ウォール・リビング内には一切置かないようにしてるしね。



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