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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1999/2601

千九百九十九 玲緒奈編 「他所様には何の責任も」

十二月十七日。金曜日。雨のち曇り。




今日は、沙奈子の学校でまた個人懇談がある。受験を控えてそれこそいろいろ話し合う必要があるからだろうな。


「私が行ってきていいですか?」


絵里奈が言うから。


「うん。任せるよ」


と、玲緒奈れおなにゴハンを食べさせてあげながら言った。沙奈子に対しても、


「それでいい?」


尋ねると、


「うん……」


学校に行く用意をしながら頷いてくれた。これも、僕じゃなくても大丈夫になったことを寂しいという感じもありつつも、それ以上に沙奈子が成長してる証だと思う。そのことを素直に喜びたい。


ただ、そうやって沙奈子の方を見てると、


「うぶあーっ!。パパっ!。ちゃー!。ぶるる、パパっ!!」


テーブルをバンバンと叩きながら玲緒奈が声を上げた。どうやらゴハンを食べてる時に自分じゃなくて沙奈子の方を見るのがダメらしい。


「ごめんごめん。あ~ん」


言いながら僕がおかゆを掬って差し出すと、


「あ~」


大きな口を開けて食べてくれた。沙奈子と話をしてるだけで文句を言ってくることについても、今はむしろ『可愛い』と思う。そうやって正直な気持ちを表してくれるのは助かる。他の人にそういうのを分かってもらおうとしてたりだったら困りものでも、僕に対してなら全然かまわない。今のこの環境に玲緒奈を勝手に送り出しておいて『なにも文句を言うな』なんて甘えすぎだと思うんだ。自分が子供を迎えなければする必要のなかった苦労なんだからね。


でも同時に、赤の他人が、


『お前が子供を作ったからだろ』


みたいに言うのは違うとも思うんだよ。この世に生まれてきたことで感じる不平不満については、自分の親に言ってほしい。他所様に当たるのは筋違いとしか思わない。


ましてや他所様が幸せそうにしてるのを妬んで文句を言うなんて、文句を言われた方からすれば、何の関係もないことだから。自分が幸せになれないような形でこの世に送り出したのは、自分の親だよ。それ以外の誰でもない。


何度も言うけど僕は、玲緒奈がこの世に対して感じる不平不満については他所様に当たるんじゃなくて、あくまで僕に対して言ってほしい。他所様には何の責任もないことだ。確かになにか直接意地悪をしてきたのならそれをした人に責任があることだとしても、『他人が幸せそうにしてるのがムカつく』とか、他所様にはなんの落ち度もないよね?。そんなことで八つ当たりされてもそれを受け止めなきゃいけない理由は、他所様にはないよね?。


なにしろ、親が勝手にこの世に送り出さなければ、『他人が幸せそうにしてるのがムカつく』こともなかったんだから。



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