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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1986/2601

千九百八十六 玲緒奈編 「小さな会社だからこそ」

十二月四日。土曜日。晴れ。




そうだ。星谷ひかりたにさん、イチコさん、田上たのうえさんは来年四年生。星谷さんはちゃんと単位足りてるのかな?と心配にもなったりするけど、


「その辺りはしっかりとマネジメントしていますので、問題ありません」


って平然としてるし、まあ、もし留年したりしても彼女だったら本当に何も問題ないんだろうな。星谷さんを見てると、


『大学を卒業することが目的じゃない』


というのが実感できる。彼女にとっては大学に通うこと自体が、自身の目的を果たすための手段でしかないんだ。そして、


『手段は目的にはならない』


を実践してる。星谷さんは。大学を通じて知り合った人たちでネットワークを作り上げていって、海外にも活動の拠点を確保していってるらしい。『新型コロナウイルス感染症』の影響でさすがに制限はあるらしいけど、それがなかったら今頃ほとんど日本に帰ってこないくらいに飛び回ってた可能性もあるって。


行動力も考え方のスケールも僕たちとは本当に次元が違う。見えてるものがまったく違うんだ。そういう人もこの世にはいて、そういう人が世界を動かすんだろうなって思い知らされる。


でも、だからこそ、僕は星谷さんの真似をしようとするんじゃなく、ほんの小さな世界でもいいから、自分の手の届く範囲を確実に守ろうと思うんだ。


星谷さんも言ってくれてた。


「お義父さんや山下さんがいらっしゃるから、私はヒロ坊くんや千早ちはやのことを任せてこうしていられるんです。でなければきっとここまで全力を振り絞れなかったでしょう。そのことに私は心より感謝しています」


とね。そして、イチコさんや田上さんはこのまま『SANA』に就職するつもりらしい。もちろん今までも『社員』だったけど、在学中は『試用期間』という形だったのが、正式にってことだ。これまた星谷さんが、


「あらかじめ、能力や人柄や適性が判明している人材がいるのですから、それを利用しない理由はないと私は考えます。学歴は確かにその方が行ってきた努力や大まかな能力の指標にはなるでしょうが、具体的な能力や人柄や適性は担保してくれません。実際に大学に通ってそこにいる方々を見て、『この方は会社員として勤めるにはあまりにも適性に欠くでしょう』と感じる方も少なくありませんでした。そういう方も学歴は申し分ありませんが、私が関わる企業には採用しないでしょう。そういうことです」


とも言ってたな。


『SANA』は、小さな会社だからこそ、人間性に問題があったり適性に欠く人を採用して使っていく余裕がない。学歴だけじゃ見えないところにこそ拘らないと成立しないんだ。


僕もなんとなくそれが分かってきた気がする。



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