千九百七十九 玲緒奈編 「親として作らなきゃ」
十一月二十七日。土曜日。雨。
今日は雨だということもあって水族館に行くのはやめて、沙奈子たちは三階に集まってる。そして、ビデオ通話越しに話をする。
「最近また、いろいろ事件もあってイジメのことが取り沙汰されてるけど、僕は沙奈子がもし学校で誰かをイジメたりしてたら、学校には通わせない。これは、玲緒奈も同じだ。このことはちゃんと言っておかなくちゃって思う」
すると千早ちゃんが、
「沙奈はそんなことしないよ。私がさせない。沙奈が誰かをイジメたりとか、そんなの有り得ないから!」
強い感じで言ったんだ。それがなんだか嬉しくて。そんな風に言ってくれる友達がいるのが本当に心強くて。
イジメっていうのは、何人もで一人をってことが多いだろうから、被害者よりも加害者の方が多いはずだよね?。なのにイジメの話になると語られるのはいつも、
『被害者をどう助けるか?』
だけ。しかも、
『イジメ被害から逃げるために学校に行かなければいい』
という話にもなる。僕もそれは選択肢の一つとして必要だと感じるし、沙奈子や玲緒奈がイジメられてたら、
『無理に学校に行かなくていいよ』
って言うと思う。だけど問題っていうのは、一面から一方向だけから対処してても解決しないことが多いのも事実なんじゃないかな。ましてやイジメの場合は被害者よりも加害者の数が多いこともあるだろうから、加害者側からの対処も必要だと感じるんだ。
だから僕は、沙奈子や玲緒奈が誰かをイジメてたら学校になんて行かせない。だってそうだよね?。自分の子供に他所様のお子さんをイジメさせるために学校に通わせてるんじゃないんだよね?。
学校を長期休めば、それは内申書にも響いてくる。なのに、加害者はちゃんと学校に通って、イジメ行為も学校側に揉み消してもらって、内申書もきれいなままで何の報いも受けないで済ますって言うの?。それはおかしいと思うんだけどな。
イジメをしたという事実があるなら、それに対するペナルティは必要だと僕も思う。だから僕は、沙奈子や玲緒奈が誰をかをイジメたなら、親としてペナルティを課す覚悟を持ちたい。怒鳴ったり殴ったりしてその場だけのことで無罪放免にするんじゃなくて、『学校に行かせない』という、将来に亘って残るペナルティを課す覚悟を持ちたいんだ。それでいい学校に行けなかったりいい会社に務められなかったとしても、それは自分が蒔いた種だから。ましてや『気に入らないから』なんてくだらない理由でイジメるとか、有り得ない。親として許さない。
だけどその上で、そもそも他所様のお子さんをイジメたりしなくていい状況を、親として作らなきゃって思うんだ。その努力をせずに子供にだけ努力を強いてリスクを背負わせて、それで親ぶってるのは違うと思ってる。




