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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1972/2601

千九百七十二 玲緒奈編 「ガス抜きになる事実を」

一月二十日。土曜日。晴れ。




今日は土曜日だけど、沙奈子たちは三階でゆっくりしてる。


木曜日に仕事が休みだった波多野さんが千早ちゃんと本音を打ち明け合ってた時のことを世間は、


『自分の親を何だと思ってるんだ!?』


みたいに責めるだろうな。だけど、二人とその親のことを知りもしない赤の他人が『なんだと思ってるんだ!?』ということ自体が、僕には筋違いだとしか思えない。だって、事情を詳しく知らないんだから。二人の親が何をしてきたのか、詳しくは知らないでしょ?。それを知りもしないで分かったようなことを言う方が『なんだと思ってるんだ』って話なんじゃないかな。


僕は少なからず事情を知ってるからこそ、二人が素直な気持ちを吐き出すことについては別にいいと思ってる。それを他の誰かを攻撃するための理由にしてたらさすがに放ってもおけないけど、自分たちの間だけで『言いたいことを言ってる』だけならその方がいいと思うんだ。


『言いたいことも言えない世の中なんておかしい』んでしょ?。二人は『言いたいことを言ってる』だけだよ。誰かが傷付くような状態じゃない形で、ガス抜きをしてるだけなんだ。自分の素直な気持ちを明らかにして、それで自分の言ってることを自分で確認してるだけ。


『こんなことを言ってて何か問題が解決する?』


というのを確認してるだけなんだよ。いくらそうやって口にしても自分のガス抜きになるだけで、実際の問題はなにも解決していない。千早ちゃんのお母さんは自分のやり方を変えたりしないし、波多野さんのお母さんは帰ってこない。姿を見せようともしないどころか連絡さえ取ろうとしない。完全に雲隠れ状態だ。


だからガス抜きにしかならないことを確認した上で、ガス抜きすることで精神の安定を図ってるんだ。ここで僕たちが、『自分の親を何だと思ってるんだ!?』みたいに二人を責めて、それで千早ちゃんのお母さんや波多野さんのお母さんが心を入れ替えてくれるの?。千早ちゃんを怒鳴りつけて暴力を振るってきたことを悔い改めてくれるの?、波多野さんのお母さんが帰ってきて、波多野さんや波多野さんのお父さんを支えてくれるの?。そうじゃないよね?。だったら僕が二人を責める意味なんて何もないよ。


それよりも、ガス抜きになる事実を受け止める方がよっぽど意味があると思う。


実際、千早ちゃんは沙奈子にきつく当たってた頃みたいに誰かにきつく当たったりしないし、波多野さんは毎日真面目に仕事をこなせてる。他のアルバイトの人が次々辞めていっても、無断欠勤の挙句に来なくなっても、波多野さんはしっかりと自分の仕事をこなせてるんだ。



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