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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1968/2601

千九百六十八 玲緒奈編 「子供を本人の承諾なく勝手に」

十一月十六日。火曜日。晴れ。




イチコさんや大希ひろきくんが保育園に行ってもまったく泣かなかったのは、二人が、お父さんである山仁やまひとさんや、お母さんである山仁さんの奥さんの『後で迎えに来るからね』って言葉を一ミリも疑ってなかったんだろうなって感じる。だって家では決して二人のことを無視しないし、泣けば必ず気にかけてくれたから、疑う必要がまったくなかったんじゃないかな。


だからそれに倣って、僕も、玲緒奈れおなのことを決して無視しなかった。ぐずれば必ず顔を合わせて、


『どうしたのかな~?』


って声を掛けた。たまに調子が悪いのかなかなか泣き止まなかったこともあったけど、そういう時も泣き止むまで付き合った。最近、『ヘアターニケット症候群』と言うのが話題になったらしいけど、一度、それらしいことがあって『あっ!』って思ったこともあった。たぶん、長さ的に沙奈子か絵里奈のだと思うんだけど、髪の毛が玲緒奈の手の指に絡まってたことがあったんだ。なんだかひどく手を気にして不機嫌になってるみたいな様子を察してよく見たら、指に髪の毛が巻き付いて食い込んでて。


この時は『こんなこともあるよね』と受け流しつつ絵里奈に玲緒奈を押さえてもらってカッターの先で慎重に切って事なきを得たんだけど、『ヘアターニケット症候群』という言葉があるのを知って、


「あの時のはこれだったんだ!」


ってなったんだ。これも早々に気付けたのは、ちゃんと玲緒奈の様子を見てたからだと思う。ぐずるのは必ず何か伝えたいことがあるから。言葉という形でしゃべることができないからうまく伝わらないだけで、赤ん坊にだってちゃんと意思がある。心がある。気持ちがある。僕は玲緒奈を見ててそれを確認した。


『面倒くさいから』


『鬱陶しいから』


『手間を掛けたくないから』


そんな理由で、


『子供なんて動物と同じ』


だと考えたい人には分からないことかもしれないけど、ううん、『分かりたくないこと』かもしれないけど、そうやって理解しようともしなかったことが後になって自分に返ってきてそれで『子供に裏切られた』とか言っても、そういうのを『自業自得』『因果応報』って言うんじゃないのかなとしか思わない。だって、最初に『裏切った』のは、親の方だよね?。


子供を本人の承諾なく勝手にこの世に送り出しておいて、それで自分に都合の悪いことは見ようとせず聞こうとせず理解しようとせずって形で裏切ったのは親の方だと思うんだけどな。


そんな親が子供から尊敬されなくても何もおかしくないと思う。



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