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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1965/2601

千九百六十五 玲緒奈編 「玲那に対するこの上ない裏切り」

十一月十三日。土曜日。晴れ。



今日もまた、沙奈子たちは、玲那と一緒に自転車で水族館へと向かう。


沙奈子たちを先導する玲那は、どんなに小さな信号でもきちんと守るし、守らせる。それは、


『信号を守らないことで得られるもの』と『大人である自分が信号を守らないことによって失うもの』を天秤にかけるからこそのものだった。


『沙奈子たちの前で信号を守らないことで得られるたった数十秒の時間』と、『大人である玲那が沙奈子たちの前で信号を守らないことによって失っていく信頼』を天秤にかけた時、『失う信頼』の方がはるかに大きくて重いと考えるからだ。


それを『些細なこと』と侮る大人を子供たちがどう見ているかを考えるからだ。


目的は『法律を守ること』じゃない。『大人が法律を守らないことで子供たちが何を思うか?』を考えることなんだ。


『法律やルールを守らない狡い人』こそが持て囃されていい目を見る社会を、子供たちに誇れるの?。そう考えるからこそ、玲那は些細なことに思えても、蔑ろにしちゃ駄目なんだと思ってくれてるんだ。


もちろん常に完璧に守れるわけじゃない。気付かいないうちに法律やルールを破ってることもあると思う。だけど、『うっかり』と『わざと』は違うよね?。ましてや、


『わざと法律やルールを破ることを推奨する』


『法律やルールを破った人が得をする』


社会がどんな人間を作っていくのか……。


玲那は、そういうことを考えもしない。ううん、それどころか法律やルールなんて蔑ろにしていいという考えを是とする大人に虐げられてきたからこそ、自分はそれを考え否定するようにしてるんだ。法律やルールを守らない大人からお金をもらって、それで贅沢な暮らしをしてきた両親と、そんな両親に対価を払って自分の欲望を満たす『法律やルールを守らない大人』に心も体も滅茶苦茶にされてきたからこそ、大人である自分が子供たちの前で法律やルールを蔑ろにする意味を考えるんだ。


僕はそんな玲那を誇りに思う。


『自分を虐げてきた加害者とそれを野放しにしてた人たちを道連れに死にたい』と考えてる玲那がそれを実行に移さずにいられてる理由を、『わざと法律やルールを破ることを推奨する』人たちは理解できるのかな。


彼女がどれほどの苦しみの中で自分を律しているのか、想像できるのかな。彼女の前で、『法律やルールを破った人こそが得をする』なんて軽々しく言える人がいるこの現実を、僕は忘れない。その現実に流されてしまうことを良しとは考えない。


それは、玲那に対するこの上ない裏切りだから。


そして、波多野さんのお兄さんの犯罪の被害者になった人への冒涜だから。



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