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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1964/2601

千九百六十四 玲緒奈編 「波多野さんのお兄さんと同じ」

十一月十二日。金曜日。曇り。




『自分を虐げてきた加害者とそれを野放しにしてた人たちを道連れに死にたい』と考える玲那がそれを実行しない理由を、僕は真剣に考える。玲那自身も言ってる。


「だってそんなことしたら、パパも絵里奈も沙奈子ちゃんも玲緒奈れおなも、みんな不幸になるじゃん。私はそんなの嫌だよ」


って。それが答だし、それ以外の理由はないんだとすごく感じる。だから逆に言えば僕や絵里奈や沙奈子や玲緒奈が、


『玲那にとって不幸にしたくない相手』


じゃなかったら、玲那を止められる方法がないという実感しかない。


法律や刑罰じゃ、玲那は止められない。実際、玲那は、実の父親を刺した事件の際に、自分の喉も包丁で刺して何もかも終わらせようとした。それは結果として失敗し、生き延びてしまい、裁判で、執行猶予付きとはいえ有罪判決を受けたんだ。あの時に死んでいたら、刑罰なんてそれこそ何の意味もなかった。自爆テロを図るテロリストを厳罰が止められないのと同じだと思う。


最近ではそういうのを『無敵の人』と言うらしいけど、自分の家族すら守りたいと思わない、それどころか逆に苦しめるために事件を起こすと考える人を刑罰で止められなくてもそれは当たり前だとしか思わない。


波多野さんのお兄さんが、僕たちの周りでは一番分かりやすい例だと思う。


波多野さんのお兄さんは、自分の欲求のために見ず知らずの女性に乱暴を働いたけど、それと同時に、自分の家族を苦しめるために、逮捕されてからも露悪的に振る舞い続けている。被害者を冒涜し、社会を嘲り、『自分は何も悪くない』と、刑が確定して初犯の未成年だったにも拘わらず刑務所に収監されてさえ、一切、反省の様子を見せていないと担当した弁護士ですら頭を抱える『無敵の人』だった。彼は、自分がそう振る舞うことで自分の家族を苦しめられるっていうのが本当によく分かってるんだ。世間がそんな彼を攻撃すればするほど、彼の家族である波多野さんたちへの攻撃も強まり、彼の望みが叶えられる。


なのに世間には、自分の憂ささえ晴らせればいいと、それ以外のことなんてどうでもいいと考えて、波多野さんのお兄さんだけじゃなく、波多野さんの両親や、妹であり同時にお兄さんの犯罪の被害者の一人でもある波多野さんのことさえいまだに攻撃する人もいる。そんな人たちにとっては、本当は『正義』なんてどうでもいいんだっていうのがよく分かる。


やってることは、波多野さんのお兄さんと同じだよ。自分の憂さを晴らしたいだけの理由で誰かを苦しめようとしてるだけだ。



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