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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1958/2601

千九百五十八 玲緒奈編 「言う方がおかしいと」

十一月六日。土曜日。晴れ。




先週、水族館に行ったことで、今日は行かないことになった。沙奈子と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと結人ゆうとくんは、玲那と一緒に三階で寛いでる。いつものように。


その様子を、僕と絵里奈はヘッドセットで耳にする。


すると千早ちゃんが、


「なんかまた、電車の中で千枚通しだかなんだかを振り回したのがいたらしいね。この前の事件があったばっかじゃん。なんでそんなことすんだろ。この前の奴なんか、『死刑になりたかった』とか言ってたらしいじゃん。『ふざけんな。死にたきゃ一人で死ね!』ってヤツだよね」


すごく『憤り』をみせてた。それに対して、


「まったくだ……!」


結人くんが同意する。だけど玲那は、


「千早や結人の言いたいことも分かる気がするけど、私は正直、『死ぬんだったら、私に汚いもん突っ込んだ奴らとそんな奴らを野放しにしてた奴らも道連れにして死にたい』とは思うからなあ……」


とぶっちゃけてきた。そうだ。それが玲那の『正直な気持ち』なんだ。今でも。だけど玲那は、それをしたら僕や沙奈子や絵里奈や玲緒奈れおなの人生も滅茶苦茶になるのが分かってるから、抑えられてるだけなんだ。すると千早ちゃんも、


「そりゃ玲那さんはそう思っても仕方ないと思うけどさ……」


トーンダウン。


「……」


結人くんは黙ってしまった。そこに大希くんが、


「でも、僕たちは玲那さんがどんな目に遭ってきたか知ってるからそう思えるけど、知らない人からしたら、この前の事件の犯人に対する気持ちみたいに、『死にたきゃ一人で死ね!』ってなると思うよ?」


と発言する。それを、『元死刑囚の孫』である大希くんが口にするのが、ものすごい皮肉だと感じる。彼のお祖父さんは、それこそ、『虐げられてきたことに限界を迎えて爆発、七人もの人を死なせて死刑になった』んだから、先日の事件の犯人とやってることは同じなんだよね。しかも裁判では、


『俺をさっさと死刑にしないと、この場にいる全員を殺してやる!!』


みたいなことを口走ったらしいから。もちろん、裁判に参加してた人の多くは、本来なら何の関係もない人だ、裁判官だって検察官だって弁護士だって傍聴人だって、元々は無関係な人がほとんどだ。


だけど、大希くんのお祖父さんにとっては、『関係あるかないか』なんて、どうでもよかったんだろうなって気がする。自分を虐げてきた人たちを野放しにしてた時点でもう、『同罪だ』っていう理屈なんだろう。


もちろん僕はそれを正しいとは思わない。そんなのは結局、『社会の所為』『他人の所為』にしてるだけだとしか思わないから。


でも、だからこそ、僕は、『社会の所為』『他人の所為』にしてる親の姿を、沙奈子や玲緒奈に見せたくないんだ。親がそんなことをしてて、


『社会の所為にするな!。他人の所為にするな!』


なんて、言う方がおかしいと思うから。



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