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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1955/2601

千九百五十五 玲緒奈編 「一人歩き記念日」

十一月三日。水曜日。晴れ。




昨日、玲緒奈れおなが歩いたことで、『一人歩き記念日』になった。しかも玲緒奈自身、それが楽しいのか、何度も歩こうとする。しかも、バランスが保てなくなるとお尻を落として尻もちをついたり、膝を着いてから四つん這いになったりして、ちゃんと頭を守るようにしてるのがまたすごい。生き物としての本能的な動作なのかな。


それがどうかは分からないけど、きちんとできてることに感心する。


「ああもう!。玲緒奈可愛すぎる!」


「本当に可愛い♡」


玲那と沙奈子もメロメロだ。しかも玲緒奈も、玲那を指差して、


「ねーっ!」


沙奈子を指差して、


「ちゃーっ!」


とか言い出して。


「え?。ひょっとして『お姉ちゃん』って言おうとしてる……?」


玲那が察した。確かに、玲那を見て「ねーっ!」、沙奈子を見て「ちゃーっ!」って何度も言うんだ。『ママ』『パパ』みたいな言いやすいそれがないから、玲緒奈にとって言いやすい言い方なのかもしれないけど、とにかく玲那と沙奈子をちゃんと見分けて呼んでるのだけは分かった。


「くあーっ!。かわいすぎんだろ♡」


「玲緒奈、お姉ちゃんだよ♡」


玲那はともかく、沙奈子が『こんな表情するなんて』って思うくらいの柔和な表情になってた。たぶん、外では決して見せない表情。


学校でも、相変わらず『埴輪』とか『ロボちゃん』とか陰で呼ばれてるらしい沙奈子だけど、本人は別に気にしてないらしい。どうでもいい相手にどう思われてたって平気になってきてるんだと思うと、すごく頼もしい。


そうだ。すべての人に好かれるなんてことはできないって、実社会を見てても分かる。だったら、どうでもいい相手から好かれることなんて期待する必要もないと思う。


なにより、『一つの考えがすべての人に受け入れられる』『すべての人が同じ考えをするようになる』ってことがないのは分かってるんだ。そんなことは歴史を見ればすぐに分かる。それと同じで、『すべての人が自分を好きになってくれる』なんてことも有り得ない。


でも同時に、


『だからこそ僕たち家族の間だけでもお互いを好きでいたい』


と思うんだ。好きでいられるための努力をするんだ。お互いに相手が自分とは違う人なんだってことを認め合いたいんだ。相手が自分とは別の人だって認めないと、自分の思い通りにならないことが許せなくなると思う。玲緒奈のことだって、決して他の家族にとって都合のいい子でいてくれるわけじゃない。理不尽に怒ったり、機嫌を損ねたり、暴れたりしてる。


だけど今の玲緒奈のする程度のことは、大したダメージにはならない。ムキになる必要はないんだよ。だからこそ今のうちに『自分が受け止めてもらえてる実感』を得てもらうんだ。



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