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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1954/2601

千九百五十四 玲緒奈編 「本当にすごい成長だ」

十一月二日。火曜日。晴れ。




そうだ。他人の努力を嘲笑う人が『努力さえすればどうにでもなる』なんてことを口にするなんて、酷い矛盾だよ。


努力したらどうにでもなるといったその口で、他人の努力を嘲笑うんだよ?。本当に何のつもりなんだろう。それって、


『気に入らない相手を貶めたいからその場限りの適当なことを口にしてる』


だけだよね?。自分の言ってることに一貫性があるのか整合性があるのか考えもせずに感情に任せて好き勝手言ってるだけだよね?。


もちろん人間だから完璧ではいられないし僕だって矛盾したことを口走ってしまうことはあると思う。だけど少なくとも、そんな自分を正当化したいとは思わないよ。そんな大人なんて僕は信頼できないから。信頼できない大人に自分がなってしまってそれで子供から信頼されなくなるなんて、本当に何をやってるのか分からないと思う。、


そんなことを考えてる僕に、


「ふばっ!。パパッ!!」


って声を上げながら玲緒奈が縋りついてきた。そして、僕の肩をバンバンと叩く。


「痛い、痛いよ、玲緒奈」


服の上からだから本当は痛いわけじゃないけど、『叩いたら痛い』ということを分かってもらうためにそう口にする。でもこの時のは、そんなことよりももっと気にするべきことが起こってたんだ。


僕の前で仕事をしてた絵里奈が、


「今、玲緒奈、歩きませんでしたか……?」


って、目を見開いて。


「え…?」


思わず僕が玲緒奈の方を見ると、肩から手を放した彼女が、どこにも掴まらずに立ってて。


「え……!?」


僕が声を上げると、すとんとその場に座り込んで、


「ぶーあ!。うばっ!。パパッ!!」


言いながらバンバンと床を叩く。それからトンネルの方にハイハイで移動してトンネルの壁を使って立ち上がって、


「ぶあーっ!。ぶるるるる!!」


叫びながらよろよろと僕の方に歩いてきたんだ。その距離、五十センチ程度。だけど確かに玲緒奈は歩いた。


『どこにも掴まらないで立つ』っていうのをすっ飛ばして、いきなり歩いたんだ。


「うわーっ!。歩いた!。玲緒奈歩いた!。すごいすごい!。歩けたねえ♡」


僕は自分でも信じられないくらいに浮かれた声を上げて、玲緒奈を抱き締めてしまった。


「玲緒奈ぁ……!」


絵里奈は感極まって両手で顔を覆ってる。


ああ、本当にすごい成長だ。玲緒奈、すごい成長だよ……!。


だけど当の玲緒奈は、


「ばーっ!。パパッ!。ぶあっパ!!」


とか、明らかに猛抗議しながら僕の顔を押し退けようとする。抱き締められているのが不満らしい。


「あはは、ごめんごめん♡」


放した僕の頬を玲緒奈がびしゃん!と叩いて、でもそれが本人も痛かったらしくて、また、


「びゃああ~っ!!」


って泣き出してしまった。


「うんうん、痛かったね。パパも痛かったよ」


言いながら僕は、改めて玲緒奈を抱き締めたのだった。



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