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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1952/2601

千九百五十二 玲緒奈編 「嫌な役目から逃げてる」

十月三十一日。日曜日。曇り。




今日、関東地方でまた、電車内で刃物を人を刺して、しかも火を点けたっていう人がいたらしい。


さらにそれは、以前、サラダオイルを撒いて火を点けようとした事件の失敗から学んで、可燃性の高いライターオイルを使ったっていう。


……どうして、そんなことを『学ぶ』んだろう……。誰かの失敗から学ぶなら、なぜいい方向に活かそうとしないんだろう。


僕は、『誰かを傷付けようとする人を育ててしまった親の失敗』から学んで、沙奈子や玲緒奈れおなを、


『自分が気に入らないからって誰かを傷付けようなんてことはしない人』


に育てる努力をしてる。


『自分が気に入らないから誰かを傷付けていい』


って考える親の在り方を学んでしまった事例から、どうしてそうなったのかを学んできた。


親が、『自分が気に入らないから誰かを傷付けていい』と考えていたら、子供がそんな考えを持たずにいられる、それを否定できるようになるのは、すごく難しいっていうのを感じてきた。


実の父親が七人もの人を死なせて死刑になったという山仁やまひとさんは、自分の中の攻撃性を抑えるために常に自分自身にそれは正しくないと言い聞かせているそうだ。


これは、絵里奈も同じ。玲那も同じ。千早ちはやちゃんも同じ。波多野さんも同じ。田上たのうえさんも同じ。


『自分の感情こそが最優先されるべきでそのためなら誰かを傷付けていい』


と考えてる親の在り方を否定するためには、常にそれを意識して抑え続けなきゃいけなかったんだ。


ただ、山仁さんのお父さんの場合は、事件を起こすまでは我慢して我慢して我慢して我慢して我慢し続けたそうで、そんな父親の姿も参考になったそうだけど。普段は不器用でありつつ相手を気遣える優しい人だったらしいし。


でも、そんな山仁さんのお父さんでさえ、限界を超えたら、七人もの人を殺せてしまった。だから山仁さんはただ我慢を続けるんじゃなくて、自分の鬱憤を巧く解消することも心掛けてきたそうだ。


それに協力してくれたのが、奥さんだったって。奥さんは、山仁さんが抱えていたものを全部言葉にして吐き出して、奥さんの前で泣くことを許してくれたって。だから、『元死刑囚の実の息子』でありそれを理由にたくさんの人から攻撃されてきた事実に耐えることができたんだって。


僕はそこから学んだんだ。だからこそ、家族の、家族同然の人たちの、不平不満に耳を傾けるようにしてるんだよ。それを溜め込みすぎて、爆発してしまわないように。


自分がそうやって家族の不平不満と向き合いたくないからってただ『我慢しろ』って言うだけなんて、それ、言ってる本人が『家族の不平不満に向き合うという嫌な役目』から逃げてるよね?。我慢してないよね?。自分は我慢しないのに相手には我慢しろって言ってて、それで自分の不平不満を受け止めてもらえると思うのはおかしくないかな。



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