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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1949/2601

千九百四十九 玲緒奈編 「軽々しく口にされても」

十月二十八日。木曜日。晴れ。




玲緒奈れおなも一歳一ヶ月を過ぎ、ますます元気な『ちっちゃいモンスター』になってきてた。その様子を、和室の沙奈子の机の上に置かれたスマホのカメラで見てた波多野さんが、


「マジ子供ってすぐに大きくなりますね」


って言ってきた。今日はバイトが休みで、部屋で寛ぎながらビデオ通話を繋いでるんだ。すると、一階で休憩中の玲那が、


「ところで、『ウンチ事件』の続報は?」


だって。以前、波多野さんのバイト先の和菓子店の中にウンチが落ちてたという事件があったんだけど、もし誰かの『嫌がらせ』だったりした場合には当然、続けてそういうことがあるだろうということで気になってたんだ。でも、波多野さんは、


「幸い、あれ以来、そんなことはなかったよ。念のため、店内の細菌とかについても検査してもらったけど、問題あるレベルじゃなかったって。まあ、ウンチが落ちてたところを中心に、店内を徹底的に殺菌・消毒したからね。おかげで次の日の開店準備中もアルコール臭くてさ。目一杯換気してやっと気にならない程度になったんだよね。


うちの店は、そういうことすごく徹底してる。店長も社長も、ちゃんとした大人だってすごく感じる。自分がいい職場を見付けられたって実感してるよ。給料は確かに安いけど、『社会のお荷物』って言われる程度の収入しかないけど、それでも私は今の店を選んでよかったって思ってる。社長が今の給料しか出せないって言うんならそうなんだって思う。ホントは商品の値段をもっと上げることで利益を増やして従業員の給料も増やしたいって思ってくれてるみたいだけど、そうしたら売れなくなるんだよね。だから給料も上げられない。デフレってこういうことを言うんだなって実感したよ」


波多野さんの言うことは、デフレってものの厳密な定義からしたら正確じゃないのかもしれないけど、感覚的にはそんなに間違ったことも言ってない気がする。千早ちはやちゃんも、ケーキ屋を経営するにあたって『社会のお荷物と言われなくて済むような年収を得る』ためにケーキの代金を試算したら、『これは買ってもらえないだろうな』という値段になってしまったそうだ。その値段でも買ってもらえるようになるにはみんなの収入が増えなくちゃいけないけど、収入を増やすには代金や料金を上げなくちゃいけなくて、でもそれを上げると買ってくれなく利用してくれなくなるというジレンマ。


その点で言えば、他に競合する商品が少ない『SANA』のそれは、割といい値段設定ができてるらしい。それでも、従業員全員に『年収八百万円以上』になるだけの給与は出せないのが現実だ。


『年収八百万円未満は社会のお荷物』『世帯年収一千万円以下は社会のお荷物』みたいなことを軽々しく口にされても、困るよね。



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