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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1946/2601

千九百四十六 玲緒奈編 「世界が広がっていくにつれ」

十月二十五日。月曜日。雨。




僕は実際にこうして玲緒奈れおなを育ててみて、こんな小さな赤ん坊を叩く意味なんかまったくないと実感した。この子が横暴で理不尽な振る舞いをするのはまだそういうことが理解できていないだけだし、僕や絵里奈や沙奈子や玲那の振る舞いを見て、『人間としてどう振る舞うか?』っていうのを学んでる真っ最中だから、僕たちがちゃんと手本を示せばそれでいいっていうのを改めて実感したんだよ。


玲緒奈は本当に僕たちのことをよく見てる。見てるけど、毎日話し掛けててもやっと『ママ』『パパ』と言えるようになっただけなのと同じで、今はまだうまく再現できないだけなんだ。言葉すらすぐにはしゃべれるようにならないのに、『人としての振る舞い』が、目の前で手本を見せてたってすぐに真似できなくて当然だよね。今はとにかくいろんなことを見て聞いて触れて、それを徐々に情報として整理して論理的に考えられるようになるための準備段階なんだよ。だから大人と同じようにできなくて当然なんだ。


その上で、この段階で、


『気に入らないことがあったら叩いていい』


というのを先に学んでしまわれたら、後でそれを訂正するのにまた時間と手間を取られることになるというのも悟った。


僕は、そんな無駄なことをしたいとは思わない。まず先に、『気に入らないことがあったからって叩いていいわけじゃない』というのを理解してもらった方が間違いなく楽だと思う。それが分かってるのに自分の目先の感情を優先して叩くなんて、大人として自慢できること?。自分の感情任せに相手を叩くなんて、赤ん坊だってできることだよ?。大人なのに自分の感情さえコントロールできないなんて、おかしくない?。


そう自分に言い聞かせる。でも、感情が昂ってしまうことがあるのは人間である以上は避けられないだろうから、そういう時には、絵里奈とお互いに労わり合うことでフォローしたいんだ。しかも、沙奈子も玲那も協力してくれる。


僕たちはそういう家庭を作る努力をする。『自分の感情ばかりを優先してもらえて当たり前』なんて家庭を作ろうとは思わない。そんなの、成立するはずないじゃないか。家族がみんなそれぞれ、『自分の感情を最優先してもらって当たり前』なんて考えてるんだから。


何人かの人間が一緒にいれば、誰か一人だけを優先するなんて、軋轢を生むことにしかならないと思う。もし、そんなことができたとしても、今度は家の外に出て赤の他人の集団の中で『自分だけを優遇してもらえる。自分を優先してもらえる』なんてこと、有り得ないじゃないか。


玲緒奈については、僕と絵里奈の勝手でここに来てもらったら以上は、なるべく優先するけど、でもそれも、世界が広がっていくにつれ自分ばかりが優先されるわけじゃないと学ぶことになるだろうし、その都度、諭していこうと思う。


僕はその手間を惜しもうとは思わない。



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