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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1942/2601

千九百四十二 玲緒奈編 「舵取り役ばかりいても」

十月二十一日。木曜日。晴れ。




今日は、沙奈子の学校で『個人懇談会』がある。


「私が行ってきていいですか?」


絵里奈が言うので、


「うん。いいよ。ありがとう」


と言って送り出した。『SANA』としての仕事は、星谷ひかりたにさんとの打ち合わせだったから。


「はい、どうぞ。いってらっしゃいませ」


って言ってくれたんだ。本当は星谷さんも千早ちはやちゃんの保護者として出席したかったそうだけど時間の都合がつかなくて。代わりに山仁やまひとさんが行ってくれたそうだ。当然、山仁さんは大希ひろきくんの時も出席することになる。


それもあるから、星谷さんは、


「絵里奈さんが個人懇談会に出席している分だけ時間がずれてしまいますが、私が千早のそれに出席していたとしても、その分、絵里奈さんにも待っていただくことになっていたはずです。ですからそれについては何も問題ありません。『子を持つ親』が働くのであればあらかじめ想定できる事態です」


と言ってくれてる。星谷さん自身にとっても、千早ちゃんはもう『我が子』同然で、それを山仁さんに預かってもらってる形になってるってことなんだろうな。


その個人懇談会そのものは、スムーズに終わったって。沙奈子の場合はこれといって問題もないし、成績だって志望校に提出する内申書だって、非の打ちどころのないものだってことだし。


何か特別なことをしてたわけじゃない。ただ毎日、やるべきことできることをひたすらコツコツとこなしてきただけ。そして学校では、誰かを傷付けたりしなかっただけ。それだけなんだよ。


やるべきことできることをひたすらコツコツとこなすというのは、社会に出て仕事をする上ですごく大事なことだと思う。学校に通うのは、そういうことができるようにという予行演習なんだろうなって、自分が子供を持つようになって実感した。宿題や課題だって、『なんでもこんな事をしなきゃならないんだろう?』っていう、社会に出て仕事をするようになってからもよくあることをこなせるようになるための鍛錬だって思えば、する意味もあるんじゃないかな。


そういう意味では、沙奈子は本当に『自分がしなくちゃいけないこと』『こなさなきゃいけないこと』を淡々とこなしてくれてたと思う。仕事をする上でもそれはすごい信頼に繋がると思うんだ。たくさんの人を率いて先導する『舵取り役』には向いていなくても、『船頭多くして船山に上る』の例えもあるように、舵取り役ばかりいても仕事にはならない。目立たなくても真面目にコツコツと必要なことをしてくれる人もいるんだよ。そういう人を蔑ろにしてて社会が成立するとは、僕は思わない。



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