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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1938/2601

千九百三十八 玲緒奈編 「叩いたら自分のお手々も」

十月十七日。日曜日。雨のち曇り。




今日はなんだか急に寒くなってきた。肌寒いどころか、寒い。朝はそれほどでもなかったけど、雨が上がってしばらくしたら寒くなってきたんだ。だから夜には、エアコンで暖房を。僕たちは我慢できても、玲緒奈れおなはそうはいかないからね。


だけど今日はまた驚きの事態が。


「ぶあっ!。ママッ!!」


いつものようにウォール・リビング内で傍若無人に進撃しまくってた玲緒奈が、なぜか急に絵里奈を指差してそう声を上げたんだ。


それかと思うと、今度は僕を指差して、


「ぶあっ!。パパッ!!」


『何事?』とは思ったけど、『これは、ママ』『これは、パパ』って感じだったのかもしれない。それで、一~二秒かかって、


「はい!。ママですよ~!」


って絵里奈が。すると玲緒奈は、


「ママッ!。ぶるるああ!。ママッ!!」


床をバンバンと叩きながら言ったんだ。


本当に、『その時』は突然くるんだよね。つい今までそんなはっきりとは言わなかったのに、『マンマ』とか『パアパ』とか、ちょっと曖昧な言い方から始まるのかと思ってたのに、玲緒奈はいきなり、『ママ』『パパ』と、絵里奈と僕を指差して言ったんだ。


「ああ~、ママって言ってくれたあ~♡ ありがとう~、玲緒奈ぁ~♡」


絵里奈は、嬉しくて仕方ないって感じで玲緒奈に顔を近付けていったんだけど、そしたら、


「ママッ!」


って言いながらピシャン!と絵里奈の頬をひっぱたいて。


「痛~い!。なにすんの、玲緒奈~!」


容赦なく頬をひっぱたかれた絵里奈が手で頬を押さえながら泣き真似を。そんな絵里奈を見上げながら玲緒奈は、


「あぶっ!。ぶるるるあ!。ママッ!!」


だって。


「いきなりちかよってくんな、ママ」


って感じなのかな。と思った。


「え~ん、ひどいい~!」


さらに泣き真似をする絵里奈を放っておいて今度は僕を指差して、


「うっぶ!。ぶうう!。パパッ!!」


とかなんとか。これは何を言ってるのかまったく分からない。でも、


「そうかあ、ごめんね。玲緒奈」


僕が頭を掻きながら言うと、


「ぶぶあっ!。パパッ!!」


手を挙げながら『どやあ!』って顔をする。ホントに感情豊かな、自分の気持ちを素直に表現する子になってくれたと思う。


絵里奈をひっぱたいたこととかについては、今はまだいい。痛いと言っても本当にたかが知れてるから。これが他所の子に対してそうしそうだったら、僕か絵里奈が間に入って体で止める。


すると今度は、


「え~?。なんでパパのことは怒らないのぉ~?」


と抗議しながら抱き上げようと伸ばした絵里奈の手をピシャンって叩いて、でも今度は叩いた自分の手も痛かったのか、


「う…、うびゃ…、うびゃああああ~っ!」


って泣き出して。だから僕は玲緒奈を抱き上げて、


「うんうん、痛かったね。叩いたら自分のお手々も痛いよね。だからママも叩かれて痛かったんだよ」


と諭したのだった。



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