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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1937/2601

千九百三十七 玲緒奈編 「僕が沙奈子の才能を」

十月十六日。土曜日。曇り。




今日は、絵里奈と玲那の誕生日。ちょうど土曜日だっていうこともあって、千早ちゃんが二人のためにまたケーキを作ってくれてる。それを、沙奈子と大希ひろきくんと結人ゆうとくんが手伝う。


水族館については、また今度だって。ドレスのデザインのアイデアについては十分にあるし。


千早ちゃんのケーキ作りの腕は、それこそもうプロ以外の何ものでもないらしい。デコレーションケーキについても、最初の頃の、『小学生が作ったにしてはすごく上手だけど、市販のと比べると……』だったものが、それこそ有名店のケーキと比べても遜色ない出来になっていた。味も、甘すぎず食べやすい、僕たち好みのそれだ。


専門的な勉強はしてない千早ちゃんだけど、今ではネット上にもケーキ作りについての詳細なコツとかが書かれてたりするし、それを参考にしつつ、沙奈子や大希くんや結人くんに意見を求めつつ、地道に研究を続けてきたんだ。しかも必要とあらば、


「指導者となる方を手配します」


とまで星谷ひかりたにさんは言ってる。それは千早ちゃんのためというのもそうだけど、『ケーキ屋を経営する』ということ自体を星谷さん自身が学び、そこから何かを得ようという狙いもあってのことらしい。


発想が根本的に僕たちと違うんだと思い知らされる。星谷さんにとっては自分の身の回りにあるすべてが未来に向けての『糧』であって、それを活かすためには手間も出費も惜しまないという、確固たる信念がすでに出来上がってるんだろうな。


何をどうすれば、どんな風に育てれば彼女のようになるのか、まったく分からない。星谷さん自身も、


「そうですね。企業人として優秀な両親の在り方を間近で見てきたことで自然と学んだ部分は多いと思いますが、具体的な『教育法』『育児法』というものは、父にも母にもなかったそうです。いわば、『何故かは分からないけれどそうなった』というだけでしかありません。ですので、私の両親の真似をするだけでは、そのまま私のような者が育つということではないでしょう。それはわきまえていかないとと思います」


とのことだった。


確かに、僕が沙奈子や玲緒奈れおなに対してしてることも、決して、


『社会の役に立つ優秀な人材を育てる』


ためのものじゃない。ただただ、


『僕の子供たちが他所様を害さないようにする』


っていうだけのことなんだ。そしてそれは、たぶん、上手くいく。『上手くいく理由』を僕はすごく実感してる。


すごい才能を持っててそれですごい功績を残す人を育てる方法なんて、僕には分からない。沙奈子はたまたま『人形のドレスを作る才能』があって、僕はあくまでその芽を摘まないようにしてきただけ。


僕が沙奈子の才能を引き出したわけじゃないんだよ。



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