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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1936/2601

千九百三十六 玲緒奈編 「今のイチコさんや絵里奈は」

十月十五日。金曜日。曇り。




『特に邪魔をされたら困る場合には、玲緒奈が寝てる間に仕事をしようと思う』


というのは、つまり、『玲緒奈が寝てる深夜の内に仕事をしようと思う』ということ。会社に出勤して打ち合わせとかが必要な時にはもちろん会社に行くけど、僕の仕事は『図面を引くこと』だから、期日までにそれができてればいいんだ。鷲崎わしざきさんのイラストと同じ。鷲崎さんも、深夜の静かなうちの方が集中できるからということで深夜に仕事をしてることも多いっていう。


そう言えば山仁やまひとさんも夜に原稿を書いて、昼は寝ているっていうのをずっと続けてたな。


だから僕もそれに倣おうと思う。ただし、なるべくなら一緒に起きてたいから、できる限りは昼の間にやろうと思うけどね。


だから今日も、玲緒奈を膝に抱いて仕事をする。と、しばらくは壊れたマウスをいじって遊んでたと思うと、「ぶっ!」って声を上げてマウスを投げ捨てた。それから床に敷いたクッション材の上に転がったマウスを追いかけようと僕の膝から下りて猛然とハイハイで進んでマウスを拾い、カチカチカチとしばらくいじったと思ったら「ぶっ!!」って言ってまたマウスを放った。


どうやらこれ自体が遊びみたいだ。


僕と向き合って座卓の上にノートパソコンを置いて星谷ひかりたにさんと書類の確認をしてた絵里奈が、苦笑い。


女の子としてはずいぶんと乱暴な遊び方が、ちょっと心配らしい。それに対して僕は、


「イチコさんも赤ん坊の頃はこんな感じで結構なやんちゃぶりだったそうだし、今はまだ大丈夫なんじゃないかな。あくまで家族以外の相手に乱暴なことをしようとした時に間に入って止めればいいと思うしさ」


絵里奈の心配も分かった上でそう言う。そんな僕に絵里奈も、


「そうですね。私も小さい頃はそれこそ『聞かん坊』だったそうです。気に入らないことがあると大声上げて泣き喚いて。それで母親が『うるさい!』って言ってひっぱたくとそれこそ怒り狂ったみたいに泣き叫んで。でも、叔父に預けると嘘みたいにおとなしくなってたとか。だけどそのことについて叔父は、『属は絵里奈の言おうとしてることに耳を傾けてただけだよ。躾とかしたわけじゃない』って言ってました。実の母親より叔父の方がよっぽど私の扱い方を分かってたみたいですね」


だって。僕はそれこそ両親から僕についての話はほとんど聞いたことがなかったな。僕と関わること自体が面倒で仕方なかったみたいだ。もっとも、絵里奈が聞かされたのも、ほとんど愚痴ばっかりだったそうだけど。


絵里奈もイチコさんも赤ん坊の頃はそうだったと聞いて、僕は安心したんだ。今のイチコさんや絵里奈は、別に乱暴なタイプじゃないしね。



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